ndtm50の日記

ブログ5年目に突入!

仮想通貨相場と金融市場への影響

最近、仮想通貨(ビットコイン)のチャートを見る回数が多くなりました。

すでにピークからは大きく下がっていますが、それでも仮想通貨全体の時価総額が50兆円ぐらいあり、変動率が他の金融資産と比較にならないぐらい大きいので、ビットコイン相場が金融市場全体へ与える影響は無視できなくなっていると考えているためです。

個人的には、ビットコインはインチキ商品で、人類史上最大のバブルという見方をとっています。

理由は、仮想通貨はキャッシュフローを生まないため、金融理論から言えば価値がないからです。

仮想通貨が価値を持っていように言われる根拠は、データが消滅しない仕組みで保存されていること、取引所等を通じて(法定通貨への)換金手段があることです。
しかし、両替可能だから、価値がないものでも高い価格をつけるというのは”バブル”以外の何物でもないと思います。

まず、”仮想通貨”という言葉に騙されて”通貨”と勘違いしてしまいますが、保護されたデータに過ぎないことを認識した方がよいと思います。

モノやサービスの交換に用いることを”目標”として作られたデータのため、仮想通貨と呼んでいるのでしょうが、通貨としての信用を得るためにはそのものに価値がなければなりません。

法定通貨は政府が価値を保証しているため、事実上、金融資産(政府〔または中央銀行〕の負債)と考えることが可能です。金などの金属には、そのものに利用価値があります。それらの信用を背景に備蓄や交換手段として使われるのが通貨です。

しかし、仮想通貨は、1)データの保管が保証されている、2)取引所での両替や一部の店舗で買い物ができるという特徴があるものの、これらはデータそのものに価値を与えているものではないことに注意が必要です。

本来は、価値があるものの中で、保存性があり、持ち運びが便利なものが支払い手段は貯蓄手段としてプレミアムが付与されて通貨として流通しているのです。昔は穀物や家畜も使われていましたが、保存性が低いため金銀銅といった金属に代わり、最近では政府保証をつけた紙が主流になっています。、

繰り返しますが、仮想通貨はキャッシュフローがないので、金融理論に従えば価値ゼロになります。
Σ(cashflow/(1+r)^n

価値ゼロの上、ICOや分裂といった10年前のライブドア株式分割のようなことが繰り返されているわけですから、長く続くわけはないと考える方が合理的だと思います。

日本政府がフィンテック振興の一環として仮想通貨を肯定的に扱ったことがバブルを助長したわけで、罪深いと思いますが、価値がなく、際限なく生み出されるものが永続的に高い価格を維持したことは歴史上ありません。

ここにきて、(日本政府を除いて)漸く仮想通貨の規制が厳しくなり始めています。ビットコイン相場は極めて危険な状況にあると思います。

さて、問題はその規模が無視できないほど膨らんでいるということです。

1月は大きく上昇した直後の下げなので含み益が減った程度の人が多いことからそれほど大きな影響は与えてこなかったと思いますが、更なる下げは、簿価を下回る人が多くなってくることが予想され、他の金融市場への影響を注視する必要があると思います。

米国株上昇の要因について

金融市場は堅調な地合いが続いています。
その大きな要因は米国株が好調なことにあると思います。

米国株が好調な理由は、低インフレ率からFRBによる利上げスピードがゆっくりになっているためと思います。

現状のインフレ率を”正確に”説明できないことから、FRBをはじめ多くの有名な研究機関、著名なエコノミストがインフレ率が低いことを”謎”としています。それによって、意味不明な”トンデモ”理論が見られ始めており、現在の低インフレは構造的なもので、未来永劫、物価上昇率は低いままだと主張する人も出てきているようです。

しかし、”正確に”説明できないまでも、低インフレ率の要因を挙げることはできます。
主なものは以下のとおりです。

1)リーマンショック後の経済成長率が低いこと
2)為替(米国にとってドルの実効相場)が安定していること
3)オイルなどの国際商品市況が低位安定していること


物価の決定要因は「需給」と「外部要因」です。

「需給」とは需要と供給の関係です。需要が供給より大きくなれば値段は当然上がります。マクロでは需給ギャップでみることが一般的です。

「外部要因」とは、仕入価格の変動によるものです。為替が安くなれば輸入価格が上がるので最終価格も上がりやすくなります。オイルなどの資源価格も同様です。

現在の米国経済は、需給ギャップが水準として需要超過になっていると推計されていますが、成長率が低いのでその超過幅の拡大はマイルドなものにとどまっていると思われます。

過去をみると、金融緩和で株価が上がり始めると資産効果が働いて需要が盛り上がり、需給ギャップが大きく拡大(需要超過)するため、短いタイムラグでインフレ率が上昇しました。

今回は株価が大きく上昇しているのに、経済成長率が低いままだということは、株価の資産効果が弱まっていることが考えられます。

なお、米国や日本の最近の経済成長率が低くなっているのは「潜在成長率が低下しているので当然」と説明する著名エコノミストが多いですが、これは全くの誤りです。

潜在成長率は供給能力の拡大スピードであって、(マインド効果など間接効果を除けば)需要拡大と潜在成長率に強い関係はありません。


このように考えていくと、現在の米国市場の説明は、

①低インフレ率で金利が低いから株価(資産価格)が上昇している
②株が上昇しても(潜在成長率の低下で)需要は増えなくなっているからインフレ率も上がらない。だからFRBは低金利政策を継続する
FRBは低金利政策を継続するから株価はもっと上がるだろう。
④株価が上がれば海外から資金流入があり為替も安定するから外部要因からのインフレ加速リスクもない
 →②に戻る

というロジックであることがわかります。注意深い人であれば、何かおかしいと思っていただけると思います。
日本の金融市場も米国のミラーマーケットとなっており、全く同じロジックでいけると思います。

なお、12/12(火)の日本経済新聞の経済教室で植田元日銀審議委員が「FRBパウエル体制の課題」として金融市場の構造を分析しています。久しぶりにみたまともな論文だったのでご紹介しておきます。


アベノミクスの限界

衆議院議員選挙は、結局、安倍政権への信認に終わりました。

過去5年弱の間、経済の良好な状態が続き株価が高値で推移している一方で、野党は対抗策を打ち出せず、アベノミクスの細かい点にケチつけているだけなので、当然の結果といえると思います。

さて、自民党総裁としての任期は長くても2021年までなので、安倍政権はすでに折り返し地点を過ぎて、終盤に差し掛かったといえると思います。

新聞等でもアベノミクスの評価が散見されるようになってきました。

そこで、アベノミクスについて現時点での評価を書き留めておきたいと思います。


アベノミクスで起きたことの中で重要な点は以下のとおりとです。

1)株価が上がって景気が良くなった。(良い点)
2)企業の利益は大幅に改善したが、国内生産はあまり増えていない。(良くない点)
3)最も改善した経済指標は雇用関係だが、増えたのは低賃金雇用中心(良い面・悪い面の両面)

アベノミクスの中の「大胆な金融緩和」と「機動的な財政支出」で景気が良くなったのは間違いないと思います。アベノミクス前は構造改革派が幅を利かせてまともなマクロ経済政策がとられていなかったことを考えると、
高く評価できる点と思っています。

しかし、一方で鉱工業生産指数や全産業活動指数などの統計に目を移すと、漸く2008年の水準に戻っただけでほとんど増えていないことが分かります。

もちろん、景気が良くなった分、アベノミクス開始前と比べると生産は増えていますが、過去のピークを上回っていないということは生産力の拡大が果たせていないということを意味します。
つまり、良い意味での産業構造の変化(生産性や生産力のアップ)はほぼ皆無であるということです。

さらに、生産が増えていないのに雇用が改善しています。雇用が改善していることは国民生活という観点では素晴らしいことですが、マクロ経済構造の観点でみると、同じ生産をするのにより多くの労働力が必要となっているため、生産性が低下していることを意味します。

これは長期的な経済の発展を考えた場合に深刻な事態です。

経済の発展とは生産能力の拡大です。

経済の最も基本的な考え方に三面等価の原則というのがありますが、これは、「生産」=「所得」=「支出」が必ず同じになるというものです。言い方を変えると、経済を発展させて生活を豊かにする(所得と支出を増やす)ためには、生産の拡大が必要ということです。

つまり、アベノミクスのうちの「大胆な金融緩和」と「機動的な財政支出」は、不況から脱するのに強力な威力を発揮しましたが、日本経済の老化を止めることはできなかったということです。

すでに安倍政権が終盤に差し掛かって、政府の顔ぶれも変わりませんから、政策の大きな変更は考えにくく、今後、世界の中の日本のプレゼンスは益々低下していくことが予想されます。

振り返って考えてみると、日本の経済論争は「構造改革派」と「リフレ派」と呼ばれる景気刺激を重視するグループで行われてきました。その中で「デフレ」がキーワードとして注目されました。

しかし、私は「構造改革」も「財政金融政策による景気刺激策」も、どちらが絶対的に正しいというものではなく、タイミングと使い方が重要だと考えています。

バブル崩壊後、一時期を除いて需要不足のデフレ状態にありましたから、その時に必要な対策は構造改革による生産力アップではなく、景気刺激策でした。アベノミクス初期において、大胆な金融政策が大きな効力を発揮したのはそれが最も必要な政策であったからです。

しかし、2017年初めの需給ギャップ解消が見え始めたころから、日本経済に必要な経済政策は構造問題への対応に移りました。

これを人間に例えると、

瀕死の病人を治すには、多少の副作用を承知の上で強い効果のある薬を点滴投与することが求められるが、病状が安定してきたら食事で体力をつけ、病気が治ったらリハビリや筋トレで体力を増強していくことと似ています。いつまでも点滴を打ち続けていたら、基礎体力がどんどん弱ってしまいますが、今の日本経済はそのような状況に近づいているように思われます。

経済を発展させるには、生産能力を上げること、それには設備投資を促して、生産性のアップ、生産能力の拡大を図ることです。金融緩和の継続はこれに整合的な需要創出の観点から考えるべきと思います。

未だに「デフレ」を意識して賃金引上げが今後の経済発展のポイントのように言われていますが、全くの的外れです。賃金が上がらないことは、経済の情報化、国際化、大規模化などの構造変化によって雇用環境が変わっていることが大きく影響していると思われます。(高賃金雇用のコンピュータへのスイッチング、低賃金雇用需要の拡大などの影響)

アベノミクスで瀕死の病人への治療と同じ政策を継続し、日本経済の老化が続いている以上、日本への投資はどこかで見切りをつけることが必要と思っています。

売るリスク

日本株は歴史的な連騰が続くなど、好調に推移しています。

いろいろ解説されていますが、株価上昇の理由は①中国、アメリカ市場主導で世界的に資産価格が上昇していたのに対し日本株の出遅れ感が高まっていたこと、②日本銀行ETF買いの残高が今年春ぐらいから異常なレベルになってきてメチャメチャ効いていることの2点に尽きると思います。

これまで何度も書いてきているように日本経済(=日本株)に対して長期悲観であることから、少しずつ売りあがっていますが、未だに全ポートフォリオの3分の1ぐらいは株式の残高を残しています。

オーバーシュート型の金融政策方針の下、デフレ解消がはっきりしない限り日本銀行によるETFの大量買いが継続されるため、もう少し日本株が上昇を続ける可能性も考えざるを得ないからです。

特に、春先から流通量の小さな銘柄で急騰するものがかなり増えているように思えます。その波に乗らないリスクも意識せざるを得ません。

ただ、現在の外国人買いは足の速い資金が多いように感じます。世界インデックスに負けないために消極的に買っているファンドは上値が限定的とみればすぐにポジションを落としてくると思います。

かなり難しい局面のように思います。

日本企業のもう一つのリスク

昨日、中国の経済規模がすでにアメリカを15%超も上回っているという話をしました。

そして、経済成長率が中国の方が大幅に高いことを考えると、アメリカが再び逆転する可能性は極めて低くなった思います。

また、(最近の北朝鮮情勢でもわかるように)核の抑止力は強力で、今後核保有国同士で戦争が起こる(起こす)可能性はかなり低くなっており、せいぜい地域紛争程度にとどまることがはっきりしてきました。

核戦争などでの早期終結がない前提で考えると、今後、アジア地域で紛争が起きた場合、経済力で勝る中国にアメリカが軍事行動で勝てる可能性は極めて低くなっていると思います。そして、中国の工場で生産される商品がアメリカでの豊かな生活を支えていることも併せて考えると、アメリカは極力中国との衝突を避けることになると思います。(現在北朝鮮との軍事衝突すら避けていますし、中国との直接対決は経済的な衝突すら避けています)

一方の中国は、アメリカの弱腰を読み切って、アジア地域では自国の主張に沿った経済行動(境界線での油田開発など)や軍事行動(岩を埋め立てて軍事用の施設などを建設)を今後も進めてくると思います。

つまり、日本はアメリカに頼って中国に対抗しようとしても無駄だということです。

明治時代以降の歴史で、日本は(海洋国家である)英米と手を結んだときは外交がうまくいき、英米との関係が崩れたときは外交に失敗して太平洋戦争に追い込まれたため、今後もアメリカとの関係を第一に考えるべきとの意見が主流です。

しかし、小国の外交の基本は勝ち馬に乗ることです。英米と手を組んだときにうまくいったのは、その時代の覇権国家が明治期はイギリスで、大正以降はアメリカだっただけだと思います。

特に、第二次世界大戦時にはアメリカの工業生産が世界の40%近かったといいますから、断トツの経済大国だったわけです。そのような国にヨーロッパの新興国(ドイツ)とアジアの小国(日本)が挑んだのですから、外交的にも経済的にも軍事的にも勝ち目はなかったわけです。ただひたすら言うことを聞いておとなしくしておくのが国益だったと思います。

将来を展望すると、今後20年ぐらいで中国の覇権が鮮明になってくると思います。特にアジアではインド以外に対抗できる勢力はなくなるのではないでしょうか。欧米が中国に対抗する唯一の手段は、インドと中国を敵対させてお互いに消耗させることですが、最近の動きをみるともはやそのような力も残っていないようにみえます。

さて、中国に対して、今なら日本を高く売ることも可能です。例えば、AIIBへの参加や一帯一路構想へ全面協力する代わりに日中の中間線近辺で中国が開発をすすめるガス油田を共同プロジェクトにするなどの交渉が可能だと思います。

逆に、いつまでもアメリカに気を使って中国に対して半身で付き合っていると、中国の国内事情次第で日本企業の中国での経済活動が大きく制約を受ける可能性があります。寡占化が進む世界経済において、大きなシェアを占める中国市場で自由に活動できない日本企業は競争上大きな不利益を被る可能性があります。

それにも関わらず、日本政府は対中国政策(及び対米政策)を大きく転換する考えはないようにみえます。

少子高齢化を背景とした日本経済の成熟化とともに、こうした国際情勢の変化に取り残される可能性が高いことも投資家として日本へのリスク配分を見直し、海外の成長エリアへの配分を高めるべきと考える理由です。

日本人が目を背け続ける深刻な事実

日本ではアメリカを経済No.1の国とし、自らをも経済大国の一員として語られることが多いと思います。
 
その最大の根拠は名目GDPでみた経済規模が、米国が世界で断トツに大きく、日本も中国について第3位の規模にあることです。
 
【2016年の名目GDPランキング】
1位          アメリカ 18,569.10(10億USドル)   24.7%
2位          中国(香港・マカオ含む)11,583.06(10億USドル)15.4%
3位          日本 4,938.64(10億USドル)     6.6%
4位          ドイツ 3,466.64(10億USドル)     4.6%
5位          イギリス 2,629.19(10億USドル)     3.5%
6位          フランス 2,463.22(10億USドル)     3.3%
7位          インド 2,256.40(10億USドル)     3.0%
8位          イタリア 1,850.74(10億USドル)     2.5%
9位          ブラジル 1,798.62(10億USドル)     2.4%
10位         カナダ 1,529.22(10億USドル)     2.0%
IMF World Economic Outlook より
 
しかし、経済面で真の実力を考えるためには、為替の変動を含んだ名目値でみると正しく評価できません。
 
例えば2011年から2015年にかけてドル円相場が1ドル=80円から120円に大幅に減価し、その分、ドルベースでの名目GDPも同様に減少しました。しかし、為替の大きな変動による名目GDPの減少が日本経済の実力の低下を意味すると考えるのはおかしなことだというのは理解できると思います。
 
従って、真の経済力をみるためには為替換算した名目GDPではなく、(すべての国で一物一価となるように算出した)購買力平価ベースでのGDPで比較するのが正しいといえます。
 
【2016年購買力平価ベースGDPランキング】
1位          中国(香港・マカオ含む)21,783.99(10億USドル 18.2%
2位          アメリ 18,569.10(10億USドル)     15.5%
3位          インド 8,662.35(10億USドル     7.2%
4位          日本 5,237.79(10億USドル)     4.4%
5位          ドイツ 3,980.28(10億USドル)     3.3%
6位          ロシア 3,799.70(10億USドル)     3.2%
7位          ブラジル 3,141.34(10億USドル)     2.6%
8位          インドネシア3,032.09(10億USドル)     2.5%
9位          イギリス 2,785.56(10億USドル)     2.3%
10位        フランス 2,733.68(10億USドル)     2.3%
IMF World Economic Outlook より
 
購買力平価ベースのGDPでみると、すでにアメリカは経済規模で中国に抜かれていることが分かります。2014年に逆転して以来、中国の成長率が年率5%近くアメリカを上回っているため、その差はどんどん拡大しています。
 
日本は名目GDPでは世界3位でしたが、購買力平価ベースではインドの次の世界第4位、アジアでも第3位ということになります。
 
それでも上位には違いませんが、シェアは名目GDP 6.6%に対して購買力平価ベースGDPは4.4%とだいぶイメージが異なります。
 
名目GDPベースでみると日米で世界の3割、EUの主要国を含めて4割ぐらいですが、購買力平価ベースGDPでみると日米で世界シェア2割、EU主要国を含めても3割に達しないことが分かります。
 
アジアにはシンガポール、台湾、インドネシア、マレーシアなど華僑の影響力が強い国が多く、これらを含めて中国経済圏と考えれば日米の経済規模より大きくなることから、中国の世界経済への影響力の高さが理解できると思います。

フィリピン現政権の対中政策はこのような理解の上でみないと解釈を誤ると思います。

さて、もう一つの衝撃的な事実は、日本はすでに豊かな国とはいえなくなりつつあることです。

国全体の経済規模は面積や人口が大きければ相応の規模になります。しかし、豊かさを見るためには、GDPを一人あたりでみる必要があります。

【2016年一人当たり購買力平価GDPランキング】
1位 カタール 777
4位   ブルネイ 468
9位 スイス 363
10位 サンマリノ 360
11位 アメリ 350
13位 オランダ 311
14位 バーレーン 309
17位 オーストラリア 298
18位 ドイツ 293
19位   台湾 293
21位 デンマーク 292
22位 オマーン 284
23位 カナダ 283
24位 ベルギー 274
25位 イギリス 259
26位 フランス 258
28位 日本 251
31位 韓国 230
37位 チェコ 202
47位 マレーシア 166
56位 チリ 147
74位 タイ 103
79位 中国(香港・マカオ含む) 95
IMF World Economic Outlook より(香港、マカオを中国に含めて再計算したもの)
※数値は世界平均を100として各国の一人当たり購買力平価GDPを指数化しています。
 
一人あたりのランキングでみると、上位に産油国やヨーロッパの先進国が多くなりますが、アジアではシンガポールが3位、台湾が19位と日本より上位にいます。
 
日本が台湾に抜かれたのは2009年ですが毎年差が広がり、すでに15%以上の差がついています。
韓国にもあと数年で抜かれることはほぼ確実と思います。さらに、現在は物価が安くて日本からの移住先として人気があるマレーシアについても、現在の成長率から推測すると10年程度で逆転される可能性が高くなっています。
 
生産=所得=支出ですから、GDP(生産)は所得と比例します。従って、一人当たりの所得水準は一人当たりのGDPに概ね比例することになります。
 
つまり、日本人の所得・生活水準は、今後10~20年でアジアの中程度になる可能性が高いのです。
 
未だに日本経済を褒めたたえる本や、世界経済を上から目線で語る本が書店に並んでいますが、このような数字の意味をキチン理解した上で経済分析を行わないと結論を大きくミスリードすることになるので要注意です。

「経常収支赤字は問題ない」との説明はデタラメ。通商問題はこれから

アメリカにとって北朝鮮問題の優先順位が上がり、中国に通商面で譲歩して北朝鮮問題で協力を得ようとしていることから、このところアメリカ政府の貿易問題に対するトーンが沈静しているように思います。

 

しかし、貿易問題(アメリカ・ファースト)はトランプ政権を生んだ最大の要因のため、支持率引き上げのために今後も継続してテーマに上げられると思います。

 

一方、日本ではトランプ政権の通商政策、特に貿易収支(経常収支)赤字への取り組み自体が間違っているとのプロパガンダが行われています。

 

日本国内でそのようなプロパガンダを行っても全く意味がないのですが、役人・政治家がマスコミ関係者に話し、国内のマスコミだけがそれを鵜吞みにした記事を掲載し、日本国民がそれを信じて日本に有利に交渉が進むと信じそして裏切られるという、いつものパターンだと思いますので、ここで注意を喚起しておきたいと思います。

 
 

貿易収支(経常収支)赤字に関して日本の新聞には「経常収支赤字は良くも悪くもなく、不均衡是正を政策目標にすべきではない」と書かれている記事をよく見ます。

 

それらの記事はどれも「当然のことで議論の余地なし」といった調子で詳しく書かれていませんが、内容をよくみていくと、90年代半ばの小宮理論(隆太郎元東大教授の主張)を基にしているようです。

 

そのポイントは以下の3つです。

 

(1)民間経済主体の貿易収支(経常収支)は、個々の経済主体が最善と考える選択の結果であり、それが長期にわたって赤字であっても、基本的に健全なものである。

 

(2)経済政策の目標は国民福祉を向上させることであるが、経常収支(の赤字)は経済成長や物価、雇用と異なり、国民福祉の低下につながるものではない。よって、経常収支は政策目標にはなりえず、黒字、赤字といった水準もそれ自体は問題にはならない。

 

(3)国民福祉の向上につながるのは、貿易の増大であり、輸出と輸入が両建てで拡大していくことで国際分業が進められ、分業の利益を取り入れて経済が効率化することである。

 

つまり、経常収支が赤字でも民間企業が最善と考える選択の結果であるから問題ない、国民福祉上にも影響を与えない。国民福祉に問題を与えるのは貿易の拡大であり、貿易の拡大にマイナスの影響を与える保護主義はとんでもない、という主張です。

 

しかし、企業が最善と考える選択の結果であれば何も問題ないのであれば政府の規制は何も必要ないということになりますが、そんなわけはありません。

 

また、経常収支の赤字は国民経済全体の純借入と同額になります。先行きの経済に楽観的になった企業が投資を増やして潜在成長率が高まっているのであれば問題ありませんが、成熟経済である米国では財政赤字や個人債務(住宅ローン、オートローン、クレジットカード等)が拡大しています。

 

膨らんだ債務への対応として、財政赤字の削減は社会福祉政策の切り捨てにつながります。個人債務が膨らんでいるため、アメリカの労働者は、働いても借金が減らず追い立てられているように感じていることと思います。

 

  一見、借金して消費を増やしているのはアメリカの労働者なのだから自業自得と思いがちですが、実際は、需要不足の世界経済を牽引するために低金利政策などで借金で豊かな生活をするように追い込んできたのはアメリカ政府といえます。

 

問題は貿易拡大による恩恵は一部の企業などに集中し、大半の労働者を借金まみれに追い込んでいるということです。

 

確かに貿易が拡大すれば、経済が効率化して国民福祉全体は拡大するかもしれませんが、5%の国民の国民福祉が5倍になり、95%の国民の国民福祉が▲20%となった場合(合計すると+5%)に、全体としての国民福祉が拡大しているから問題ないという主張に説得力があるか、という話です。

 

少なくとも私はトランプ大統領アメリカ国民も納得するとは思えませんので、(日本の政治家やマスコミがどんなに反論しようと)今後も経常収支赤字削減への要求は強まると思っています。

 

その場合に日本政府に有効な策があるとは思えないため、最終的にはドル安政策がとられる可能性が高いと思います。