日本人が目を背け続ける深刻な事実
日本ではアメリカを経済No.1の国とし、自らをも経済大国の一員として語られることが多いと思います。
その最大の根拠は名目GDPでみた経済規模が、米国が世界で断トツに大きく、日本も中国について第3位の規模にあることです。
【2016年の名目GDPランキング】
1位 アメリカ 18,569.10(10億USドル) 24.7%
2位 中国(香港・マカオ含む)11,583.06(10億USドル)15.4%
3位 日本 4,938.64(10億USドル) 6.6%
4位 ドイツ 3,466.64(10億USドル) 4.6%
5位 イギリス 2,629.19(10億USドル) 3.5%
6位 フランス 2,463.22(10億USドル) 3.3%
7位 インド 2,256.40(10億USドル) 3.0%
8位 イタリア 1,850.74(10億USドル) 2.5%
9位 ブラジル 1,798.62(10億USドル) 2.4%
10位 カナダ 1,529.22(10億USドル) 2.0%
しかし、経済面で真の実力を考えるためには、為替の変動を含んだ名目値でみると正しく評価できません。
例えば2011年から2015年にかけてドル円相場が1ドル=80円から120円に大幅に減価し、その分、ドルベースでの名目GDPも同様に減少しました。しかし、為替の大きな変動による名目GDPの減少が日本経済の実力の低下を意味すると考えるのはおかしなことだというのは理解できると思います。
3位 インド 8,662.35(10億USドル) 7.2%
4位 日本 5,237.79(10億USドル) 4.4%
5位 ドイツ 3,980.28(10億USドル) 3.3%
6位 ロシア 3,799.70(10億USドル) 3.2%
7位 ブラジル 3,141.34(10億USドル) 2.6%
9位 イギリス 2,785.56(10億USドル) 2.3%
10位 フランス 2,733.68(10億USドル) 2.3%
購買力平価ベースのGDPでみると、すでにアメリカは経済規模で中国に抜かれていることが分かります。2014年に逆転して以来、中国の成長率が年率5%近くアメリカを上回っているため、その差はどんどん拡大しています。
アジアにはシンガポール、台湾、インドネシア、マレーシアなど華僑の影響力が強い国が多く、これらを含めて中国経済圏と考えれば日米の経済規模より大きくなることから、中国の世界経済への影響力の高さが理解できると思います。
フィリピン現政権の対中政策はこのような理解の上でみないと解釈を誤ると思います。
さて、もう一つの衝撃的な事実は、日本はすでに豊かな国とはいえなくなりつつあることです。
国全体の経済規模は面積や人口が大きければ相応の規模になります。しかし、豊かさを見るためには、GDPを一人あたりでみる必要があります。
9位 スイス 363
13位 オランダ 311
17位 オーストラリア 298
18位 ドイツ 293
19位 台湾 293
23位 カナダ 283
24位 ベルギー 274
25位 イギリス 259
26位 フランス 258
28位 日本 251
31位 韓国 230
47位 マレーシア 166
56位 チリ 147
74位 タイ 103
79位 中国(香港・マカオ含む) 95
日本が台湾に抜かれたのは2009年ですが毎年差が広がり、すでに15%以上の差がついています。
韓国にもあと数年で抜かれることはほぼ確実と思います。さらに、現在は物価が安くて日本からの移住先として人気があるマレーシアについても、現在の成長率から推測すると10年程度で逆転される可能性が高くなっています。
つまり、日本人の所得・生活水準は、今後10~20年でアジアの中程度になる可能性が高いのです。
未だに日本経済を褒めたたえる本や、世界経済を上から目線で語る本が書店に並んでいますが、このような数字の意味をキチン理解した上で経済分析を行わないと結論を大きくミスリードすることになるので要注意です。