ndtm50の日記

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「経常収支赤字は問題ない」との説明はデタラメ。通商問題はこれから

アメリカにとって北朝鮮問題の優先順位が上がり、中国に通商面で譲歩して北朝鮮問題で協力を得ようとしていることから、このところアメリカ政府の貿易問題に対するトーンが沈静しているように思います。

 

しかし、貿易問題(アメリカ・ファースト)はトランプ政権を生んだ最大の要因のため、支持率引き上げのために今後も継続してテーマに上げられると思います。

 

一方、日本ではトランプ政権の通商政策、特に貿易収支(経常収支)赤字への取り組み自体が間違っているとのプロパガンダが行われています。

 

日本国内でそのようなプロパガンダを行っても全く意味がないのですが、役人・政治家がマスコミ関係者に話し、国内のマスコミだけがそれを鵜吞みにした記事を掲載し、日本国民がそれを信じて日本に有利に交渉が進むと信じそして裏切られるという、いつものパターンだと思いますので、ここで注意を喚起しておきたいと思います。

 
 

貿易収支(経常収支)赤字に関して日本の新聞には「経常収支赤字は良くも悪くもなく、不均衡是正を政策目標にすべきではない」と書かれている記事をよく見ます。

 

それらの記事はどれも「当然のことで議論の余地なし」といった調子で詳しく書かれていませんが、内容をよくみていくと、90年代半ばの小宮理論(隆太郎元東大教授の主張)を基にしているようです。

 

そのポイントは以下の3つです。

 

(1)民間経済主体の貿易収支(経常収支)は、個々の経済主体が最善と考える選択の結果であり、それが長期にわたって赤字であっても、基本的に健全なものである。

 

(2)経済政策の目標は国民福祉を向上させることであるが、経常収支(の赤字)は経済成長や物価、雇用と異なり、国民福祉の低下につながるものではない。よって、経常収支は政策目標にはなりえず、黒字、赤字といった水準もそれ自体は問題にはならない。

 

(3)国民福祉の向上につながるのは、貿易の増大であり、輸出と輸入が両建てで拡大していくことで国際分業が進められ、分業の利益を取り入れて経済が効率化することである。

 

つまり、経常収支が赤字でも民間企業が最善と考える選択の結果であるから問題ない、国民福祉上にも影響を与えない。国民福祉に問題を与えるのは貿易の拡大であり、貿易の拡大にマイナスの影響を与える保護主義はとんでもない、という主張です。

 

しかし、企業が最善と考える選択の結果であれば何も問題ないのであれば政府の規制は何も必要ないということになりますが、そんなわけはありません。

 

また、経常収支の赤字は国民経済全体の純借入と同額になります。先行きの経済に楽観的になった企業が投資を増やして潜在成長率が高まっているのであれば問題ありませんが、成熟経済である米国では財政赤字や個人債務(住宅ローン、オートローン、クレジットカード等)が拡大しています。

 

膨らんだ債務への対応として、財政赤字の削減は社会福祉政策の切り捨てにつながります。個人債務が膨らんでいるため、アメリカの労働者は、働いても借金が減らず追い立てられているように感じていることと思います。

 

  一見、借金して消費を増やしているのはアメリカの労働者なのだから自業自得と思いがちですが、実際は、需要不足の世界経済を牽引するために低金利政策などで借金で豊かな生活をするように追い込んできたのはアメリカ政府といえます。

 

問題は貿易拡大による恩恵は一部の企業などに集中し、大半の労働者を借金まみれに追い込んでいるということです。

 

確かに貿易が拡大すれば、経済が効率化して国民福祉全体は拡大するかもしれませんが、5%の国民の国民福祉が5倍になり、95%の国民の国民福祉が▲20%となった場合(合計すると+5%)に、全体としての国民福祉が拡大しているから問題ないという主張に説得力があるか、という話です。

 

少なくとも私はトランプ大統領アメリカ国民も納得するとは思えませんので、(日本の政治家やマスコミがどんなに反論しようと)今後も経常収支赤字削減への要求は強まると思っています。

 

その場合に日本政府に有効な策があるとは思えないため、最終的にはドル安政策がとられる可能性が高いと思います。