ndtm50の日記

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米国株上昇の要因について

金融市場は堅調な地合いが続いています。
その大きな要因は米国株が好調なことにあると思います。

米国株が好調な理由は、低インフレ率からFRBによる利上げスピードがゆっくりになっているためと思います。

現状のインフレ率を”正確に”説明できないことから、FRBをはじめ多くの有名な研究機関、著名なエコノミストがインフレ率が低いことを”謎”としています。それによって、意味不明な”トンデモ”理論が見られ始めており、現在の低インフレは構造的なもので、未来永劫、物価上昇率は低いままだと主張する人も出てきているようです。

しかし、”正確に”説明できないまでも、低インフレ率の要因を挙げることはできます。
主なものは以下のとおりです。

1)リーマンショック後の経済成長率が低いこと
2)為替(米国にとってドルの実効相場)が安定していること
3)オイルなどの国際商品市況が低位安定していること


物価の決定要因は「需給」と「外部要因」です。

「需給」とは需要と供給の関係です。需要が供給より大きくなれば値段は当然上がります。マクロでは需給ギャップでみることが一般的です。

「外部要因」とは、仕入価格の変動によるものです。為替が安くなれば輸入価格が上がるので最終価格も上がりやすくなります。オイルなどの資源価格も同様です。

現在の米国経済は、需給ギャップが水準として需要超過になっていると推計されていますが、成長率が低いのでその超過幅の拡大はマイルドなものにとどまっていると思われます。

過去をみると、金融緩和で株価が上がり始めると資産効果が働いて需要が盛り上がり、需給ギャップが大きく拡大(需要超過)するため、短いタイムラグでインフレ率が上昇しました。

今回は株価が大きく上昇しているのに、経済成長率が低いままだということは、株価の資産効果が弱まっていることが考えられます。

なお、米国や日本の最近の経済成長率が低くなっているのは「潜在成長率が低下しているので当然」と説明する著名エコノミストが多いですが、これは全くの誤りです。

潜在成長率は供給能力の拡大スピードであって、(マインド効果など間接効果を除けば)需要拡大と潜在成長率に強い関係はありません。


このように考えていくと、現在の米国市場の説明は、

①低インフレ率で金利が低いから株価(資産価格)が上昇している
②株が上昇しても(潜在成長率の低下で)需要は増えなくなっているからインフレ率も上がらない。だからFRBは低金利政策を継続する
FRBは低金利政策を継続するから株価はもっと上がるだろう。
④株価が上がれば海外から資金流入があり為替も安定するから外部要因からのインフレ加速リスクもない
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というロジックであることがわかります。注意深い人であれば、何かおかしいと思っていただけると思います。
日本の金融市場も米国のミラーマーケットとなっており、全く同じロジックでいけると思います。

なお、12/12(火)の日本経済新聞の経済教室で植田元日銀審議委員が「FRBパウエル体制の課題」として金融市場の構造を分析しています。久しぶりにみたまともな論文だったのでご紹介しておきます。