ndtm50の日記

ブログ5年目に突入!

アベノミクスの限界

衆議院議員選挙は、結局、安倍政権への信認に終わりました。

過去5年弱の間、経済の良好な状態が続き株価が高値で推移している一方で、野党は対抗策を打ち出せず、アベノミクスの細かい点にケチつけているだけなので、当然の結果といえると思います。

さて、自民党総裁としての任期は長くても2021年までなので、安倍政権はすでに折り返し地点を過ぎて、終盤に差し掛かったといえると思います。

新聞等でもアベノミクスの評価が散見されるようになってきました。

そこで、アベノミクスについて現時点での評価を書き留めておきたいと思います。


アベノミクスで起きたことの中で重要な点は以下のとおりとです。

1)株価が上がって景気が良くなった。(良い点)
2)企業の利益は大幅に改善したが、国内生産はあまり増えていない。(良くない点)
3)最も改善した経済指標は雇用関係だが、増えたのは低賃金雇用中心(良い面・悪い面の両面)

アベノミクスの中の「大胆な金融緩和」と「機動的な財政支出」で景気が良くなったのは間違いないと思います。アベノミクス前は構造改革派が幅を利かせてまともなマクロ経済政策がとられていなかったことを考えると、
高く評価できる点と思っています。

しかし、一方で鉱工業生産指数や全産業活動指数などの統計に目を移すと、漸く2008年の水準に戻っただけでほとんど増えていないことが分かります。

もちろん、景気が良くなった分、アベノミクス開始前と比べると生産は増えていますが、過去のピークを上回っていないということは生産力の拡大が果たせていないということを意味します。
つまり、良い意味での産業構造の変化(生産性や生産力のアップ)はほぼ皆無であるということです。

さらに、生産が増えていないのに雇用が改善しています。雇用が改善していることは国民生活という観点では素晴らしいことですが、マクロ経済構造の観点でみると、同じ生産をするのにより多くの労働力が必要となっているため、生産性が低下していることを意味します。

これは長期的な経済の発展を考えた場合に深刻な事態です。

経済の発展とは生産能力の拡大です。

経済の最も基本的な考え方に三面等価の原則というのがありますが、これは、「生産」=「所得」=「支出」が必ず同じになるというものです。言い方を変えると、経済を発展させて生活を豊かにする(所得と支出を増やす)ためには、生産の拡大が必要ということです。

つまり、アベノミクスのうちの「大胆な金融緩和」と「機動的な財政支出」は、不況から脱するのに強力な威力を発揮しましたが、日本経済の老化を止めることはできなかったということです。

すでに安倍政権が終盤に差し掛かって、政府の顔ぶれも変わりませんから、政策の大きな変更は考えにくく、今後、世界の中の日本のプレゼンスは益々低下していくことが予想されます。

振り返って考えてみると、日本の経済論争は「構造改革派」と「リフレ派」と呼ばれる景気刺激を重視するグループで行われてきました。その中で「デフレ」がキーワードとして注目されました。

しかし、私は「構造改革」も「財政金融政策による景気刺激策」も、どちらが絶対的に正しいというものではなく、タイミングと使い方が重要だと考えています。

バブル崩壊後、一時期を除いて需要不足のデフレ状態にありましたから、その時に必要な対策は構造改革による生産力アップではなく、景気刺激策でした。アベノミクス初期において、大胆な金融政策が大きな効力を発揮したのはそれが最も必要な政策であったからです。

しかし、2017年初めの需給ギャップ解消が見え始めたころから、日本経済に必要な経済政策は構造問題への対応に移りました。

これを人間に例えると、

瀕死の病人を治すには、多少の副作用を承知の上で強い効果のある薬を点滴投与することが求められるが、病状が安定してきたら食事で体力をつけ、病気が治ったらリハビリや筋トレで体力を増強していくことと似ています。いつまでも点滴を打ち続けていたら、基礎体力がどんどん弱ってしまいますが、今の日本経済はそのような状況に近づいているように思われます。

経済を発展させるには、生産能力を上げること、それには設備投資を促して、生産性のアップ、生産能力の拡大を図ることです。金融緩和の継続はこれに整合的な需要創出の観点から考えるべきと思います。

未だに「デフレ」を意識して賃金引上げが今後の経済発展のポイントのように言われていますが、全くの的外れです。賃金が上がらないことは、経済の情報化、国際化、大規模化などの構造変化によって雇用環境が変わっていることが大きく影響していると思われます。(高賃金雇用のコンピュータへのスイッチング、低賃金雇用需要の拡大などの影響)

アベノミクスで瀕死の病人への治療と同じ政策を継続し、日本経済の老化が続いている以上、日本への投資はどこかで見切りをつけることが必要と思っています。