ndtm50の日記

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アベノミクス終わりの始まり

2012年末から4年以上続いてきたアベノミクス相場ですが、とうとう終わりを意識すべきタイミングが来たので書き留めておこうと思います。
 
(1)アベノミクスが機能した核心
 
そもそもアベノミクスとは? ですが、
3本の矢で表現されています。
 
アベノミクス3本の矢(スタート時)】
・大胆な金融政策
・機動的な財政政策
・民間投資を喚起する成長戦略
 
【新3本の矢:1億総活躍社会(20159月)】
・希望を生み出す強い経済
・夢を紡ぐ子育て支援
・安心につながる社会保障
 
しかし、この中でまともに経済政策として機能したのは「大胆な金融政策」と若干の「財政政策」のみというのは議論の余地がないと思います。
 
では、どうして「大胆な金融政策」のみが大きな効果を発揮したのでしょうか。
 
これは、アベノミクス以前の民主党政権(鳩山、菅、野田)及び白川日銀総裁の体制が最低の経済政策を展開し、日本経済がどん底にあったからです。
 
この点を以前も書いた景気局面の考え方に沿って話をしたいと思います。
 
一般には良いか悪いかで表現される景気ですが、4つの局面に分けて考えると理解しやすいです。
 
イメージ 1それぞれの局面の意味は以下のとおりです。

①水準は低いが方向は回復に向かっている(持ち直し局面)
②水準が高く方向も拡大に向かっている(拡大局面)
③水準は高いが方向が悪化し始めている局面(頭打ち→調整局面)
④水準が低く方向も悪化している(縮小局面)
 
 
さて、アベノミクスが効果を発揮したのは、スタート時点でAの位置にいたためです。
 
この局面ではとにかく財政金融政策を総動員して経済を刺激すれば景気は持ち直します。景気の水準が低く人も設備も余っているので弊害はほとんど発生しません。アベノミクスを非難する人は多くいましたが、今では回復力が弱いこと以外、説得力のあるケチをつけるのが難しくなっています。
 
これがアベノミクスの正体です。まったく単純な理屈で説明できます。
 
 
(2)現在の日本経済の位置
 
さて、次にアベノミクスの終わりが始まったことを説明するために現在の日本経済の状況を考えます。
 
上の4つの局面で考えると現在の日本経済は、①の局面が終わって②の局面に入ったところと判断するのが妥当だと思います。
 
今週27日(木)に日銀が発表した「経済・物価情勢の展望」で景気判断で「拡大」というワードを使いました。アベノミクス景気で初めてのことです。
 
その最大の要因は雇用がひっ迫していることから、日銀も①の局面が終わり②の局面に入ったと判断しているためです。
 
高賃金雇用が縮小し低賃金雇用が爆発的に増加するという構造変化が起こっているので実感しにくいことですが、統計でみると雇用の不足感は半端ないです。
 
428日に発表された有効求人倍率1.45倍とバブル期のピーク並みの水準に達しています。
 
20173月調査の日銀短観雇用人員判断DIで見ても、バブル期のピークまでは行っていませんが、バブル期の平均水準まで達しています。
 
これらの要因から、少なくとも主要な生産要素の労働力がフル活用されていると判断でき、景気の水準は需要不足から供給不足気味の拡大局面に移行しつつあるとの判断が妥当と思われます。
 
 
(3)現在の日本経済における拡大期が持つ意味
 
過去の経験等から、日本経済が「拡大期」に入ったことをポジティブにとらえる人も多いと思います。
 
そこで、下の図を上の図と比較してもらいたいと思います。
 
下の図は上の図の角度を大きくしたものですが、「経済成長の大きい経済」、高度成長期の日本や現在の新興国の経済を示したものです。上の図は経済成長率の低い現在の日本経済を示したものと思ってください。

イメージ 2




両方の図を比較するとわかると思いますが、②の拡大期の意味がまるで異なります。
 
高度成長期における拡大期は文字通り経済を拡大・成長させました。ピークを打ってもその後の調整の程度は大きくなく、「成長部分」の大半が残るため、株式市場も経済拡大を積極的に評価することになります。
 
他方、現在の日本経済のような低成長国では、拡大期とは名ばかりで、成長期に拡大した分の大半はその後の調整局面で失われる可能性が高いのです。(もう一度上の図をよくみてください。)
 
従って、構造改革が進んで高成長経済へ移行したと確信できない限り、低成長経済における「拡大期」での経済成長はあまり評価すべきではないのです。
 
 
4アベノミクス終わりの始まり
 
これまで説明してきたように現在は①の持ち直し局面が終わって②の拡大局面に移行しつつあります。
 
黒田日銀総裁は現在の超強力な金融緩和を継続することを明言していますから短期的には経済政策の失敗で②の拡大局面が終了するリスクは小さく、アベノミクス相場はもうしばらく続くと期待してもよいと思います。
(2006年の福井総裁はこの判断を誤りました。)
 
しかし、②の局面がどのような形で終了するかを予測することは困難です。
 
今後、構造改革に成功し景気拡大が当分進むとの主張が増えて最後の大相場がくるかもしれません。
 
黒田日銀総裁27日の会見で「省力化投資などで成長率が高まる」としてこのような方向へ世間の見方を誘導しようとしています。
 
しかし、ヤマト運輸の値上げを引き金にした物流コストの上昇が価格へ波及し、異次元緩和の終了を心配する投資家の売りが先行する可能性も徐々に上がってきます。
 
いずれにしてもアベノミクスの終わりが始まったことを意識したリスクコントロールが重要なタイミングになったと思っています。