人類史上最強の金融政策で”短期楽観””長期悲観”
ドル円相場も株価も9月末から徐々に下値を切り上げてきています。
これは、10/11に指摘したように9月の金融政策変更が強力な金融緩和であったことを考えると理論通りです。
どちらかというと新聞紙上などでエコノミストに酷評されている9月の金融政策がどうして強力なのか、詳細は10/11の記事に書きましたが、
2016年9月21日の金融緩和は人類史上最大の金融緩和策導入であり、
恐らく、これを超える金融緩和は二度と採用されないと思います。
(日本が今回の局面で微調整的に緩和を強化することを除く)
それぐらい、現在の金融緩和は強力かつ異常なものであることは分かっておいた方が良いです。
ポイントはオーバーシュート型コミットメントの導入です。
物価にはヒステレシス効果(履歴効果)というものが働くため、経済実態より遅行することが知られています。
そして、現在の状況はデフレですので、履歴効果としてマイナスの効果が働いています。物価が2%に達するためには、この履歴効果のマイナス圧力を押しかえす力が必要になります。
従って、物価が2%になることがあれば、経済実態としてはすでに物価上昇率が3~5%になるべき状態に過熱しているということです。
これまでの日銀は、こうした過熱状態を絶対避けるべき状態と考えていたため、早め早めの金融緩和解除に踏み切り経済を失速させてきました。
そして、その経済失速の体験が日本企業の経営者に刷り込まれているため、多少の好景気でも投資を増やさないようになっています。
そこで、現執行部は、景気が過熱しても利上げをしないことを約束しました。これがオーバーシュート型コミットメントです。
景気が過熱するまで利上げしないと約束したのが、2003年に導入した前回のコミットメントですが、今回は過熱してもしばらくの間は利上げしませんというオーバーシュート型というのがついています。
だから、安心してリスクをとって投資してくださいということです。
今回の政策変更は2013年ほど派手さがないので、リスクをとるほうも恐る恐るという感じが相場付に出ていますが、経済が過熱してもオーバーシュートするまで利上げしない(足を引っ張らない)と日銀が約束しているのですから、勢いがつき始めると簡単にはとまらなくなる可能性が高いです。
従って、当面は短期楽観でいいと思います。
ただし、長期は悲観です。
今回の金融政策には重大な欠陥があります。
それが、人類史上だれも取ったことのない政策だし、将来にわたってもだれも採用しないと思う要因です。これについては次回説明したいと思います。