ndtm50の日記

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物価と賃金の問題について考える

先週(7/26)の日経新聞の「経済教室」欄で、「物価はなぜ上がらないのか」というお題で日銀関係者のH氏が論文を書いています。H氏は、一般にはあまり知られていないと思いますが、金融業界のエコノミスト村ではかなり有名な方で、私は1990年代~2010年頃にかけての日本経済低迷のA級戦犯の一人だと思っています。

彼のような所謂秀才タイプが一見もっともで間違った理屈をこねくり回したことが、誤った政策を続ける原因になったと思えるからです。(実際、1990年~2010年頃までの日銀の景気見通しはほとんど外れました。外れた原因を素直に研究するのではなく、自説を正当化するのに学問を使うのが、このタイプの特徴です。)

さて、そのH氏が7/26の経済教室でおかしなことを書いているので、早速それを題材に話を進めたいと思います。

H氏は、物価が上がらない理由として「賃金が上がらない点にこそ最大の問題がある」としています。しかし、どうして賃金が上がらない点が問題なのかは説明していません。ここにまず大きな問題があります。重要なポイントを前提として深く考えず、そこから派生するロジックを深堀りしているのですが、前提が間違っているのでどんなにロジックが洗練されていても結論は正しくなりません。

そして、賃金が上がらない理由として「労働組合の賃上げ要求が及び腰なため」としています。賃金決定の最大の要因が労働組合の要求というは、いつの時代の話をしているのか?、という感じですが、このあたりのロジックを小難しくこねくり回して、「問題はイノベーションの波に日本企業が十分に対応できていない点」であり「根本的な問題は、雇用慣行などの障害から日本企業がこの流れ(企業や国境の壁を越えたオープンイノベーション)についていけない点にある」と話を展開しています。その上で、そのような要因から足元の企業収益が過去最高でも10年先の競争力に地震がないのでベア要求を手控えていることが、賃金が上がらない理由であり、それが物価伸び悩みの背景と結論付けています。

そして、最後に「賃金上昇に主眼を置いたマクロ政策が必要」としています。

この賃金の上昇と景気や金融市場の関係ですが、最近の論調として、賃金が上がらないことが消費(内需)が盛り上がらない要因として、賃上げの重要性を主張する人が増えているように感じます。

しかし、過去の実例をみると、これがおかしな話であることが分かります。長くなりましたので、この賃金の上昇に関する問題は次回に書きたいと思います。