ndtm50の日記

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中央銀行の独立性の意味

最古の中央銀行は1668年に設立されたスウェーデンのリスクバンクとされています。しかし、1694年に設立されたイングランド銀行が、当時の経済・金融の中心であったイギリスで中央銀行を形作ったといえるので、イングランド銀行の歴史を調べてみました。

イングランド銀行はイギリス王室にフランスなどとの戦費を供給するために設立されました。その背景として、戦争で財政難にあった政府(王室)は、国王の意向次第で簡単に国庫の支払いを停止し、政府への貸付を行っていたゴールドスミスを大量に破綻に追い込んでいたため、信用力がなく、さらなる資金を集めるのが困難な状況になっていました。

つまり、当時の政府は、現在の法律に基づいた国民国家とはまったく異質の、王室が支配する政府であり、国王の意思次第で支払い停止などが起きるという点で、現在の国家と異なり政府に信用力が全くなかったようです。(現在の日本では政府による債務返済が法律で義務付けられており、政府の支払い能力は徴税権にて保証されています)

そのような状況で、戦費調達のためにイングランド銀行が民間(営利目的)の機関として設立され、資本金と同額を政府に貸し出す代償として同額の銀行券発行を認められました。
また、政府の信用力がないために満期近くなっても大幅なディスカウントで取引されていた政府発行の債務証を大量に買い取り、額面で償還を受けて莫大な利益を上げていました。

つまり、イングランド銀行の資産の大半は政府向けの債権であり、負債が銀行券(紙幣発行で資金を集めていた)で、高い利益率を誇っていたということです。

こうした設立の経緯および運営状況からポイントを挙げると以下のとおりです。

(1)当時のイギリスの中央銀行イングランド銀行)は、政府に資金を貸し付ける(国債を引き受ける)ために設立された

(2)イングランド銀行国債を引き受けると同時に同額の紙幣の発行を認められており、これによって国債引受のための資金を創出していた

(3)国王が支配する政府に信用力がなかったため、国から独立した機関(イングランド銀行)が紙幣を発行することで流通通貨としての信用力を得ることができた

さて、本日のテーマである中央銀行の独立性ですが、中央銀行は政府から独立していなければならないというのは、上の(3)の名残りと思われます。(何度も指摘しているように、国王の意向次第の王室国家と法律に基づいた国民国家はまるで構造が違いますから、本来、中央銀行に独立性は必要ありません。)

しかし、中央銀行を支配して莫大な利益を得ていた人たちが、「政府は民衆の気を引くために浪費してインフレを招くから、中央銀行は政府から独立して物価の安定を守らなければならない」との理屈を捻り出して独立性を守り続けているものと思われます。

なお、中央銀行国債引受けはハイパーインフレとの関連で語られますが、これについては次回にでもハイパーインフレについて書きたいと思っています。