ndtm50の日記

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ヘリマネはどうしていけないか?

ヘリコプター・マネーが話題になっていますが、ヘリマネはどうしていけないかを考えてみます。
(結論は、ヘリマネは『いけないもの』というほど特殊なものではなく、これを特殊なものと主張する人の思考が問題ということです。)

日銀の黒田総裁はヘリコプターマネーについて「必要も可能性もない」と発言しています。

どうして必要ないと言うのでしょうか、どうして可能性を排除するのでしょうか。


それは、黒田総裁を初め、日銀・政府関係者が、この問題にまともに答えることができないからです。

地位ある人がこのように発言(必要も可能性もない!と断定)するともっともな感じがしてしまいますが、だまされてはいけません。大抵の場合、まともに答えることができないからごまかしているのです。


ヘリコプター・マネーの定義はいろいろありますが、日銀による国債引受けを利用した財政政策として使われることが多いように思います。

そこで日銀による国債引受けについて考えてみたいと思います。


日銀による国債引受は重大事を引き起こすように言われています。

しかし、あらゆることに共通しますが、それが重大事を引き起こすかどうかを説明することは簡単ですが、重大事を引き起こさないことを説明することはすごく難しいため、日銀による国債引受も大した問題ではないことを説明することはすごく難しいです。

似た例として、将来地震が発生することを説明することは簡単ですが、地震が絶対に発生しないことを説明することはものすごく難しいということがあります。地震が発生する可能性が低いことは言えても、絶対に発生しないことは説明が難しいのです。


さて、日銀による国債引受に話しを戻すと、これが重大な問題を引き起こさないことを説明することは難しいので、重大なことを引き起こすと主張している人の説明が、まったくロジカルではないことを指摘したいと思います。


日本銀行はHPで、国債引受について以下のように説明しています。

『(日本銀行による国債引受が禁止されているのは)中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからです。』

いかにも役人が書いた文章です。一見もっともですが、よくみるとロジックが破綻しています。

以下の点をまともに説明できる人はいないでしょう。

1)中央銀行がいったん国債の引き受けによって政府への資金供与を始めると財政節度を失わせるのはなぜか
2)それが中央銀行通貨の増発に歯止めがかからなくなるのはなぜか
3)中央銀行通貨の増発に歯止めがかからなくなると悪性のインフレーションを引き起こすのはなぜか

なお、日本銀行は、このような突っ込みに正確に説明できないことを認識しているため、インフレーションを引き起こす「恐れがある」としています。(引き起こすとは言っていないことがミソです。)

これを作文した役人も、インフレーションが起きることをロジカルに証明できないと思っているのです。


そもそも、日銀による国債引受はいけないが、現在の金融政策は(民間投資家が引き受けた国債を日銀が買い取っているので)問題ないと主張する人が多くいます。

しかし、日銀による国債引受と、日銀が市中の国債を大量に買うことの経済的効果に違いがあると、本当に思っている人がいるとしたら驚きです。(この二つに経済効果の差がほとんどないことは、冷静に考えてみれば、説明の必要性がないレベルの自明なことだと思います)

現在、国債を引き受けているプライマリーディーラーは、すぐに日銀に売ることを前提に(日銀の買取価格を予想して)引き受けているわけですから、日銀による引受と何も変わりません。

従って、日銀による国債引受はいけないが、現在のように市中から大量の国債を買い取ることは良いという人は、何も考えていないか、政治的に場当たり的な発言しているかどちらかです。


また、政府は、日銀が大量に国債を購入し国債金利がマイナスにある状況で財政のファイナンスに懸念があるとは思っていませんから、国債引受で財政節度が失われるのであれば、今の枠組みでも財政節度は失われます。

つまり、財政節度を守るのは、日銀が国債引受を行うかどうかではなく、将来の経済状況への認識であったり、インフレを意識した政策運営が行われるかといった点にあるのです。


こうした点から、ヘリコプター・マネーが絶対悪のように言う人のロジックがそれほどたいしたものではないことを理解してもらえたでしょうか。

ヘリコプター・マネー以外にもいろいろな政策対応は可能で、必ずしもヘリマネがベストという訳ではありませんが、ヘリマネや日銀引受ももっと柔軟に考えてみた方が本質が見えてくると思います。