原油需給の改善スピードは一般に言われているよりはるかに早くなる可能性あり
2/10のブログで書いたように原油ETFと資源国通貨(主にカナダドル)を買っています。
株式市場は、陰の極になると予想した2/10には底打ちとならず、2/12に急落して底をつけ、その後も戻りが弱い状態が続いていますが、今のところ2/12の下値を上回って推移していることから、全体感としては相場の流れをはずしていないのではないかと思っています。
さて、今後も資源絡みのポジションは維持しようと考えています。
原油は、WTI先物で2/11の1バレル=26ドルから直近では46ドルと3ヶ月で80%近く戻しているため今後は戻りの勢いが弱まるとみられますが、一般的に言われているように当分底這い状態が続くとも思えず、60~70ドルのレンジを目指す展開を予想しています。
俗に言う資源アナリストの人たちが巨大な装置産業としての資源の特徴を全く踏まえないで当面底這い説を唱えており、経済紙もそれが正しいかのように報道しているため、ここで少し説明しておきたいと思います。
なお、私は資源業界で働いたことはないため、細かい点で事実誤認があるかも知れませんが、結論には影響ないと思われることから気にせず書きますのでご了承ください。
まず、2014年の年末頃から原油価格が急落を始めましたが、そのころからシェールオイルの採算ラインの報道が二転三転しています。新聞には技術の進歩で採算ラインが下がったと書かれていますが、恐らくこれは事実に反していると思います。
むしろ、「採算ライン」の定義に問題があるのです。
原油を採掘して利益を得るためには、以下の流れになります。
1)土地買収、環境整備
2)調査(原油を掘って採算がとれるか?)
3)資金の借り入れ
4)掘削、設備の設置
5)原油の採掘(産出)
6)原油の販売
7)借り入れの返済
ここで、巨大な装置産業の特徴として1)~4)に巨大な資金が必要になることが挙げられます。
一方、土地を購入して設備を設置してしまえば、5)の採掘にはそれほど金がかかりません。ただし、採掘に必要な費用は都度出費が必要な費用となります。
ここで、採算ラインを考える場合、償却費用を含めるか実際に出費が必要な費用のみで考えるかによって全く金額が変わってきます。
当初、シェールオイルの採算ラインが70~90ドル程度と言われていたのは償却費用込みの採算だと思います。
その後、1バレル40ドルを割るようになっても産出量が減らなかったことから技術進歩によって採算ラインが30~40ドルに下がったと言われるようになったのは、償却費用を除いて考えるようになったとみると理屈が通ります。
なお、シェールオイルの開発資金に借り入れを当てていた場合、安定稼動に入ってから、採掘可能年数で割った分割払いでの返済になっていると思います。
今度は、シェールオイル事業者の立場にたって考えてみます。
シェールオイルの産出が始まったところで原油価格が急落しました。償却費用を考慮した場合の採算ラインを大きく割り込んでいますが、償却費用を考えなければ原油を販売した売上で当面の費用はカバーすることはできます。
(キャッシュフローはプラス)
ここで、借り入れ資金の返済が始まります。これを返済できなければ、デフォルト(破綻)になります。
このときに経営者が取る行動は、(価格が下がった分)生産量を増やして当面の返済資金を確保することです。
実際に、2015年前半にはリグの数は微減しながら、全体の産油量が増加しました。(産油量の増加をみて、新聞は技術の進歩で採算が改善したと報道しました)
しかし、当面の返済資金を確保するために計画よりも産油量を増やせば枯渇までの期間が短くなります。
つまり、もともと小規模で少ししか取れないものを、価格下落分のキャッシュフローを量で稼ぐために計画より産出量を増やせば、それだけ枯渇が急激に進むことが予想されます。
2016年に入ったあたりからリグの数が減っているのは、このためではないかと考えています。
以上の私の見方が正しければ、投資の償却も含めた採算ラインである1バレル70~80ドルを安定して超える見通しがなければ、追加での投資を行う企業はほとんどいないでしょうし、キャッシュフローのために増産している油田は急激に産油量が落ちてくることが予想されるため、原油の需給が逆転するのは一般的に言われているよりもはるかに早いのではないかという結論が得られます。