ndtm50の日記

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金融危機を考える(2) 危機は忘れたころにやってくる

国家に対する信用毀損であるソブリン危機を除き、通常の金融危機は、主に「流動性危機」と「信用危機」に分けられることを説明しました。

そのうち、「流動性危機」は景気の良いとき・経済が強いと思われているときに起き、「信用危機」は景気が悪いとき・経済が弱っているときに起こります。

つまり、危機は経済が強いと思われている場合にも起こるということです。


ところで、流動性危機を考える前に、株価・地価といった資産価格は実体経済と相互に影響を及ぼしあうことを理解する必要があります。

資産の理論価格はキャッシュ・フローの現在価値なので、経済が強くキャッシュ・フローが拡大すると理論価格は上昇します。通常は理論価格と相前後して相場も動きます。つまり、景気→資産価格という方向で影響を及ぼすことになります。

一方、資産価格が上昇すると、含み益を発生させた投資家が支出を増やすため、需要が増加し景気がよくなります。これは資産効果と呼ばれる現象で、資産価格→景気という方向で影響を及ぼすことになります。

つまり、資産価格と景気は、双方向に影響を与え、しかも景気がよくなると資産価格が上昇し、それがさらに景気を刺激するという発散効果を持つという特徴があります。


従って、なんらかの原因で景気が拡大するか資産価格が上昇すると、景気と資産価格が双方向で影響を及ぼしながら、スパイラル的に景気が良くなり、資産価格が上昇します。



さて本題ですが、景気拡大が続くと含み益を抱えていることもあって気が大きくなり、多くの人が楽観的になっていきます。また、株価上昇で大儲けした人の話も報道され、次第に借金して株・不動産へ投資する人が多くなっていきます。これがレバレッジです。

レバレッジは、資産価格が一方向へ進む場合には大きな利益をあげられますが、逆方向へ進むとすぐに追証が必要となり、資産売却を迫られます。

市場全体でレバレッジが高まっている状況で、何らかの外的ショックで相場が反転した場合、理論価格と乖離して大きく売り込まれることがあります。

ここで問題なのは、資産価格が大きく下落すると逆資産効果(含み損が支出減を招き、景気を悪化させること)が働き、キャッシュ・フローの減少を招き、それが理論価格を下落させ、最終的には乖離したと思われていた実際の資産価格と理論価格が一致することです。

そうなると、押し目を拾う投資家がいなくなり、価格は反発力を失い、下落が歯止めを失うと金融危機に発展します。

それをとめるのは財政金融政策ですが、景気が良い状況が長期化していると政府も楽観的になり政策対応が遅れ、金融危機が悪化または長期化することになります。

つまり、金融危機は政府・マスコミ・一般の人が経済が良い状況にあると思ったときに始まるのです。

「危機は忘れたころにやってくる」です。

このところ、新興市場の危機を心配する人はいますが、米国市場の危機を心配する報道は見たことがありません。みんな、米国で8年周期でバブルと崩壊が繰り返している「米国バブル8年周期の法則」を忘れているように思います。

もっともリスクが高いのは、新興国金融危機に陥ることよりも、レバレッジを高めている米国の投資家が新興市場の下落で損失計上することによって流動性危機に発展することだと思います。