ndtm50の日記

ブログ5年目に突入!

米国金融市場に死角あり

12/15、16に開かれる米FOMCで9年半ぶりの利上げが予想されています。

市場関係者のコメントをみると、そのほとんどが米国経済の強さを指摘するものとなっています。

つまり、新興国を中心に世界経済が脆弱性をはらむ中、米国だけが力強く回復軌道に乗っており利上げに転じる。その結果として新興国から米国への資金流出が加速し、ドル高が続く。そして、新興国経済には資金流出が経済を悪化させるリスクがあることに注意、という内容です。


しかし、どちらかというと米国市場の方がリスクが大きいと思います。

現時点で米国だけが利上げを予定していて、他はむしろ利下げ局面にあるのは、政策対応の違いとそれによっておきた景気の局面の違いという側面の方が強いです。

リーマンショックが起きた後の政策運営をみると、以下のとおりです。
・中国:4兆元といわれる財政支出で景気を刺激
・米国:2008年12月にゼロ金利および量的金融緩和を実施
・日本:2013年4月に量的・質的金融緩和を実施
・欧州:2014年にゼロ金利政策実施

これらの政策をみれば、中国、米国、日本、欧州の順に景気が立ち上がっているのは当然といえます。
なお、景気回復が早かった中国経済は、一度景気が過熱した後、現在は景気後退局面にありますので、米国経済のはるか先を進んでいるといった方が正しいと思います。


以上、説明が長くなりましたが、米国経済が強いのではなく、景気刺激策実施の順番に景気が回復してということが理解できたと思います。


さて、このようにリーマンショック後の政策対応が早かったために立ち上がりも比較的早かった米国経済ですが、経済が強いどころか、様々な金融市場の歪みが気になります。

まず、為替水準が高すぎます。このブログでは何度も指摘しているので繰り返しませんが、為替市場が金融政策の方向性という1テーマでドル高を演出した結果、水準として過大評価になっているのです。

ドル高が進んだため、経済には輸入デフレ圧力がかかっています。内需が盛り上がっているのに物価上昇圧力が弱いのは、(商品市況の低迷および)為替の影響が大きいと思います。そして、その輸入デフレ圧力が現在まで利上げを遅らせ、ゼロ金利政策は7年(2008年12月~2015年12月)という長期に亘りました。


そして、過大なドル高による企業収益のマイナスインパクトから、株価は上値が重い展開が続いています。米国株が直近のピークをつけたのは2015年5月で2015年8月に高値をつけた日本よりかなり早くなっています。

また、リーマンショック時と比較して名目GDPが約1.2倍になっているのに対し、株価は1.3倍になっています。
つまり、株価の水準も過大評価されている可能性が高くなっています。


長期に亘るゼロ金利政策、過大なドルによる輸入デフレ圧力を上回るほど内需が盛り上がった状況にあること、その内需でも上がらなくなるほど米株が過大評価されていること、そして、米国市場が世界でもっともグローバル化が進んでいることを考えると、米国の機関投資家の中に過度なレバレッジを効かせている投資家がいる可能性がかなり高いと思われます。

さらに、以前、このブログで指摘したとおり、米国市場は8年毎に上下を繰り返していますが、来年の2016年は長期トレンドが可能に転じる年にあたります。

つまり、来年はちょっとしたきっかけで米国市場の脆弱性が顕在化する可能性が結構高いことを注意すべきと思います。