ndtm50の日記

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政府のダム理論は間違っている

最近の政府の行動をみると、安倍政権は、景気が加速しないのは企業が利益を溜め込んで賃金を増やさず個人消費が低迷していることが要因と思っているようである。

つまり、ダム理論を『企業が利益を上げ内部留保を厚くすると、ダムから水が溢れ出すように企業から資金が溢れて賃金の増加に繋がり、そして、その賃金の増加が個人消費の拡大につながる』と解釈して、そのようなメカニズムが機能していないことが日本経済の問題であると分析しているようである。

最近の安倍首相の行動は、以上のような解釈を踏まえて、政府が圧力をかけて史上最高レベルの収益を上げている企業に半強制的に賃金を引き上げさせ、それによる個人消費拡大で景気を最加速させようという試みと思われる。

しかしながら、この考え方には二つの問題がある。

1点目は、生産・売上が拡大しない中で過去の蓄積をもとに賃金を増加させると、その期の企業利益は毀損されることなる。そのような行動は、株主によるガバナンスが高まっている企業にとって合理的な行動ではない点である。

2点目は、賃金の増加は全てが消費に回るわけではなく、賃金が増加したうちの一定割合が貯蓄に回り、その残りが消費に使われるため、賃金→個人消費→生産のメカニズムが働きすぎると(賃上げが過ぎると)、景気は加速どころか、ブレーキがかかることになる点である。

生産が縮小または停滞している中で、賃金を増やせば利益が毀損する。そのような行動は企業にとって合理的ではないし、景気拡大にもマイナスということである。

正しいダム理論の解釈は、『企業が利益を上げて内部留保を厚くすれば、生産拡大による資金増加分のうち、賃金に回る割合が少しずつ高くなる』ということである。政府の解釈と微妙な違いであるが、生産の拡大にポイントをおくか、企業が蓄積した利益の活用に重点を置くかに大きな違いがある。

このような考えをもとにすれば、政府は生産活動の拡大を最優先課題にすべきということになる。しかし、最近の政府・日銀の動きは生産活動よりも分配政策に熱心なようにみえる。

誤った解釈で企業に半強制的に賃上げを迫るのは、よい結果(景気拡大)をもたらすとは思えないので注意が必要であろう。