失われた25年はまだまだ続く
今週はECBが12月の金融緩和を示唆を示唆し、中国は利下げと準備預金率下げを実施しました。
ECB総裁による金融緩和の示唆は金融緩和のアナウンス効果を狙ったものであり、実質的な金融緩和の実施と言えます。実際、ユーロが下落し、株価が上昇しました。
翻って日本銀行の慎重さが目立っています。財務省(麻生財相)も金融緩和に慎重な発言をしています。麻生氏の発言は、補正予算が主役との意識でしょうが、いずれにしても日本は金融緩和に後ろ向きな印象を与えています。
何度も指摘していますが、過去25年間の日本の最大の問題は日本銀行が金融緩和に後ろ向きであったことです。
アベノミクスのもと、黒田日銀は過去の日銀の金融政策を否定して登場しましたが、今や、全く同じロジックに陥っています。
「既に十分緩和している」というやつです。
それに対し、マネーサプライが伸びていないことや実質金利が下がっていないことなどを理由に金融緩和が不十分であるとの意見との対立が続いてきました。
例外は、福井総裁の前半(2003~2005年)ぐらいです。それ以外はずっと金融緩和の不足で景気が抑制されてきました。
実質金利なるものは、非常に曖昧なもので、それが経済に与える影響も不安定であるからです。
日本銀行が大好きな同じような指標に実質実効為替レートというものがあります。これは、インフレ率考慮後の為替水準が平均してどの程度にあるかを示したものであり、輸出競争力の指標とされています。
日本銀行はこれをネタに為替水準は十分輸出刺激的な水準にあるため、これ以上の円安は副作用が大きいと考えているようです。
しかし、実質実効為替レートも、様々な前提の中で様々な推測を加えて算出したもので、非常に曖昧なものです。
これらの曖昧なものを重視しすぎると判断を誤る原因になるのですが、日本で政策立案を行っている日銀職員、経済官僚などは机上の学問をやりすぎたため、現実世界ではなく、実質金利や実質実効為替レートなどの概念的な曖昧なものにこだわる傾向が強いようにみえます。
これは、旧日本軍の参謀が戦場の実態ではなく戦術論の書物をみて戦略をたてているようなものだと思います。
大切なことは現実を見据えることです。不安定な概念にこだわる前に、景気と物価の方向を見定め、悪化するのであれば金融緩和が足りない、景気が拡大しすぎるのであれば、金融緩和が行き過ぎていると判断すべきなのです。
生産活動から判断すれば、日本の景気はピークアウトし悪化し始めています。(水準は高いが向きは下方向)
これは、金融緩和が不足していることを意味します。
それにも関わらず金融緩和は十分と政策当局者が発言すれば、海外の投資家は黙って資産を売却していきます。日本の株価の戻りが世界的にみて出遅れていることをみれば、日本の状況が海外からどう見られているかは明らかと思います。
そして、希望的観測で客観性を捻じ曲げ、金融緩和をためらい、市場の圧力に押されて遅れて対応する姿勢は、過去25年の日本銀行の姿そのものと思います。