ndtm50の日記

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新アベノミクスで旧来型の経済政策へ逆戻り

経済政策は、「成長政策」と「分配政策」の二つに分けることができます。

「成長政策」は、経済成長を通じてパイを広げるための政策です。

そして、成長政策は、景気を良くして成長を促す景気刺激策と、政府が成長を高めるために行うインフラ投資などの成長戦略と呼ばれる政策に分けることができます。


「分配政策」とは、集めた税金の分配(支出)を通じて富を再配分する政策です。累進課税でお金持ちから集めた税金を低所得者や高齢者へ配分する福祉政策などは分配政策の典型例です。

通常、道路建設などの公共投資は成長政策として行われるものですが、1990年代以降の日本の公共投資は分配政策としての側面が大きかったと思います。(主に地元の中小建設業に資金を配布するために行ったため)


高度成長期までは、日本の経済政策は成長政策一本でしたが、田中角栄氏の日本列島改造論あたりから分配政策にシフトしはじめ、1990年代以降は、政治(=国民の意識)が分配政策に偏重してきました。これが「失われた○年」の原因だと思います。


アベノミクスの3本の矢(積極的な財政投資、大胆な金融緩和、成長戦略)は、デフレを脱する(景気を良くする)ことにフォーカスされていたと言う意味で、1990年代以降初めて成長政策に軸足を移しました。

その結果、景気回復に絶大な効果を発揮しました。資産価格も、経済のパイの拡大に素直に反応し、地価・株価が大幅に上昇しました。

賃金はほとんど上昇せず、また、年金生活者の所得も増えませんので、円安や消費税率上げによる実質所得の減少が格差拡大につながりました。成長政策に軸足を置いていたので当然だと思います。



これに対し、新三本の矢の最大の特徴は、分配政策に大きくシフトしたことだと思います。

1本目の強い経済及び名目GDP600兆円という部分にパイの拡大への意識も感じられますが、手段が示されていません。そして、新しく加わった2本目(子育て支援)、3本目(社会保障)は典型的な分配政策です。

さらに、同時に浮上した軽減税率の導入も分配政策です。軽減税率導入に伴うコスト増は企業収益にマイナスですから経済のパイ縮小に作用しますが、低所得者への実質的な富の移転という効果があります。

加えて、大胆な金融政策へのコメントも控えめになっています。円安の物価上昇による実質所得のマイナスや預金者の金利収入減を避けるためのようです。これは、成長政策を担うべき金融政策すら、分配政策に使用しようとしていることを意味します。


分配政策は所得・資産の偏りを是正するもので、経済のパイを広げることにあまりつながりませんので、資産価格には影響を与えません。むしろ、分配政策に偏重して成長政策がおざなりになると、資産価格には急激なブレーキがかかってきます。


分配政策、軽減税率、そして大胆な金融緩和に後ろ向きな姿勢は、公明党配慮から出ていると言われているようです。

来年の参院選挙に向けて支持率が下がっているから公明党受けの良い政策を並べないと勝てないとの発想のようですが、そのいずれもがこれまでの安倍政権を支えてきた株価にマイナスなものばかりということです。

支持率が下がったから他党の協力を得るために行った行為が、支持率にマイナスな政策ばかりということですから、さらに支持率を下げて公明党のご機嫌を伺い、経済成長に逆風が強まるという方向性がみえてきます。


外国人はそのあたりのリスクを感じ取っているのでしょう。海外市場で売られたときの下げは2倍で、戻しは半分という相場が続き、8月中旬以降の日本市場は一人負けのアベノミクス前に戻ってしまいました。

振れの大きさや戻りの不自然さから、相場を支えるための公的資金も相当入っているのだと思います。
投資部門別売買状況でみても金融機関の買い越しが大きすぎます。

10/30の日銀金融政策決定会合が一つのポイントですが、ここで金融緩和が見送られるようであれば、一旦、日本市場から距離を置いた方が良いかもしれません。