ndtm50の日記

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バブルを避けるために経済成長を放棄している日本

これまで何度か説明してきたように、アメリカの金融政策は物価の安定と最大雇用の実現を目指しています。
つまり、価格が安定している限り、雇用を拡大するために需要を刺激続ける低金利を継続します。

従って、為替がドル高に推移し、輸入価格が低下すれば需要超過(生産能力を超えて需要がある状況)でも総合物価(全商品・サービス価格の平均)で物価の上昇が抑えられていれば、金利の引き上げは抑制されます。

その結果として資産価格が上昇しやすくなりますが、アメリカでは、資産価格が上昇している最中に先行きの成長期待が上昇したことによる相場上昇か、バブル(根拠のない価格上昇)か見分けるのは極めて困難だと考えられている(又は、価格上昇を肯定するためにそのように考えているふりをしている)ようです。

そのため、金融政策はバブルが崩壊したら最後の貸し手として機能すべき(金融緩和と資金供給によって資産価格下落のマイナスの影響を最小限に抑えるべき)と考えられており、むしろ崩壊後の政策対応が重視されています。


他方、日本では未だにバブルは金融政策の長期化がもたらす、いわば政策の失敗の産物と考えられています。そのため、相場が上昇すると、すぐにバブルかという議論になります。2013年からの株価上昇でも、ニュース等でバブルかという話を何度も聞きました。

相場が上昇している最中に判断するのは不可能と考えるアメリカと大きな乖離があります。

バブルが政策の失敗で、絶対に避けなければならないものとされているため、金融政策では経済の需給ギャップ(生産能力と需要の差)が最重視され、需要超過を放置することは非常に危険なことと考えられているようです。


過去25年間、日本では、将来のバブル発生を防ぐため需給ギャップを重視した政策がとられており、景気が回復するとすぐに金融が引き締められ(金融緩和の度合いが弱められ)通貨高に転じるため、物価が上昇しなくなりました。それどころか、常に海外よりインフレ率が低いため購買力平価仮説上の理論値が円高方向にシフトし、不況時にも通貨が下がらないため、デフレが加速しやすい体質になってしまいました。

デフレ・スパイラルからなかなか逃れられないため、長期的にみても需給ギャップが均衡するのは短く、ほとんとの期間で需要不足となるため、国内産業も育ちにくくなりました。

需要不足の経済では、投資回収が可能なのは、一部の勝ち組企業だけとなることから、国内での投資マインドは萎縮し、潜在成長率が低下します。これが日本の構造問題の本質です。


さて、バブルかどうかの判断を半ばあきらめ、バブル崩壊後の対応に注力するアメリカと、バブルを絶対的に防ぐものとして同時に経済成長もあきらめている日本の過去20年間をみれば、経済発展のスピードや資産価値の伸びの乖離は明らかになっています。

従って、経済発展を目指すのであれば、10年に1回程度のバブルは、国際化が進んだ資本主義経済における必要悪と認識すべきなのです。

なお、黒田総裁のコメントを見る限り、インフレ・ターゲットといいながら需給バランス最重視の考え方は変わっていないようです。これが未だにインフレ率が低迷している原因と思います。


経済学の教科書的にいうと、インフレ率、期待インフレ率は以下の式で表されます。

インフレ率=f1(需給ギャップ)+期待インフレ率+海外要因
期待インフレ率=f2(前期のインフレ率)+環境要因

※ f1、f2はカッコ内を変数とする関数で係数は正です。

ここで、前期のインフレ率が-1%、インフレ・ターゲットが2%とします。
前期のインフレ率が大幅なマイナスですから、期待インフレ率もマイナスかゼロに近い数字になります。
ここでインフレ率をターゲットの2%に持っていくためには、海外要因が大幅なプラスにならない前提であれば、需給ギャップがプラス(需要超過)にならなければなりません。

つまり、バブルを警戒して需給バランスを気にしている限り、インフレ・ターゲットは達成できないし、「失われた○年」は続きます。

国際的な経済競争に勝つためには、バブルは必要悪として割り切る以外にはないのです。