8年に一度バブルを経験するアメリカとそれが怖くて経済成長をあきらてきた日本
前回までに説明した為替のメカニズムと、それを政治的に利用した為替政策は、景気循環、相場変動に大きな影響を与えるようになっており、特にアメリカの金融市場では、8年に一度バブル(とその崩壊)を経験するようになっています。
それを理解するにあたって、まずは、景気拡大期の後半、景気が過熱気味になった時の状況について考えてみます。
通常の景気循環と金融政策の考え方では、景気が過熱してくるとインフレ圧力が高まってきますので金融引き締めを行い、需要を減退させて(需給ギャップを改善させて)インフレ圧力を抑えます。通常、需要抑制が行き過ぎて、景気後退期に突入します。
(従来の考え方)
景気過熱 ⇒ 金融引き締め ⇒ 需要減少 ⇒ 景気後退・インフレ抑制
しかし、景気過熱した時点で、マイルドな金融引き締めを実施すると同時に、為替政策で自国通貨を高めに誘導していけば、輸入価格の低下がインフレ圧力抑制に作用するため、需要の抑制が小さくても、一時的にはインフレ圧力を制御することが可能となります。
(為替政策を政治的に利用した場合)
景気過熱 ⇒ 金融引き締め ⇒ 需要の伸びを抑制 ⇒ 景気拡大期が長期化
通貨高によるインフレ抑制(輸入価格低下)
こうしたメカニズムを意図を持って利用し、相場のコントロールを行ったのが1995年以降のルービン財務長官のドル高政策だと思います。1990年代後半、ドル高誘導でインフレ圧力をコントロールしながら景気拡大を継続させた結果、長期の株価上昇が続き、ITバブルへと繋がっていきました。
その後、反動があったにもかかわらず、マンデル・フレミング・モデルの考え方はいろいろな意味で利用しやすいらしく、信者が増殖していった結果、最近では以下のような動きになりつつあります。
(最近のアメリカ経済)
景気過熱 ⇒ 金融引き締めの予想 ⇒ 通貨高によるインフレ抑制 ⇒ 景気拡大期が続く
これが永遠に続けば、景気拡大がずっと続くわけですからみんなハッピー♪、ということになりますが、前回までの為替理論を思い出してください。金融引き締めによる通貨高は永遠につづくことはありません。
そして、どこかのタイミングで通貨高が維持できなくなると、インフレ圧力が制御できなくなるため、大幅かつ急激な金融引き締めが必要となります。
この場合、すでに景気の過熱状態が長期に亘っているため、資産価格もバブル化しており、恐慌的な景気後退と資産価格下落が起きやすくなります。
実際にアメリカの景気・株価・為替の動きをみると、1990年代以降、8年周期でこうした見方に整合的な動きをしています。
他方、日本では景気過熱によるバブルが怖いため、金融引き締めをすぐに実施する(または金融緩和が甘い)ため、これまで説明したメカニズムが全く働かず、経済の成長がとまってきました。
次回は、これがなぜ8年周期で起きているのか、今後の金融市場がどのように動くかを考えていきたいと思います。