為替の決定理論について考える
少し時間が空きましたが、為替に関する第三弾です。
今回は、金融政策が為替を動かすという考え方について書きたいと思います。
この場合、タイムラグ(金融緩和を行ってから為替が減価するまでの時間)は、投資の検討に要する時間だけなのでほとんどはないと言えます。取引する資金は、大半が投資用の待機資金が当てられるので、資金調達の時間も必要ありません。
問題は、金融政策の内外格差によって生じた資金流出(及び通貨安)は時間の経過とともに、徐々に減衰することです。これは、投資が国内に偏っている場合には、分散投資の意味もあって海外投資は高水準で行われますが、海外投資比率が高まってくると、追加の海外投資はリスクが高くなりますので、同じ期待収益率では投資はできなくなってきます。
さらに、海外投資は大抵の場合国内で消費する資金ですので、海外投資が長期に亘ると、還流圧力が高まってきます。
つまり、金融緩和に伴う為替の動きは、金融緩和直後には大きく動きますが、その後は徐々に推進力が弱まり、さらに時間を経過すると逆に国内通貨の需要が高まるということになります。
また、マンデル・フレミング・モデルでは適正な為替水準を示すことはできません。IS曲線は国によって異なりますし、時間の経過とともにシフトもするので、均衡為替レートを明示することができないのです。
1.タイムラグがほとんどない。
2.金融緩和による通貨安圧力は、初めが一番大きく、長期化すると逆回転の圧力が高まってくる。
3.均衡水準を示すことができない。単に方向性(金融緩和国の通貨は安くなる)を示すだけである。
なお、政策当局においては、景気が良くて金融引き締めを行えば、通貨高でインフレ圧力を抑制できるという意味で非常に便利な理論ということになります。