ndtm50の日記

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米国の通貨政策と金融危機の関係

 最近の相場の動きについて、米国のドル政策が影響しているとみていますので、その背景等について書いておこうと思います。

 まず、米国は、少なくとも1980年代半ばぐらいから、為替を政策手段に使っています。
建前では市場主義を唱えていますが、実際の行動や市場の動きをみると、本音では相場誘導を行っていると思います。

 具体的には、1980年代後半から1995年頃までは、景気浮揚効果を狙ってドル安誘導を行っていました。この時期は、冷戦崩壊などで世界的なデフレ圧力が強まっていて需要喚起が課題であったことや、オールドエコノミーと呼ばれる重厚長大産業の労働組合が政治力を持っており、その影響で通貨安による国際競争力確保への思惑が強かったことが要因と思います。

 その後、1995年からは、(リーマンショック後の一時期を除いてドル高によるインフレ抑制効果を重視し、)ドル高⇒インフレ抑制⇒低金利⇒資産価格の引き上げを行うように変化しました。ルービン財務長官の時のドル高政策が転換点と思います。

 米国の政策スタンスが変化したのは、1990年代半ば頃から投資の一般大衆化が進み、資産価格維持が支持率獲得の重要な政策手段となったことによるものと考えています。

 この変化は、世界金融市場に大きな影響を与えました。つまり、米国が人為的に通貨価値を高めに誘導してインフレを封じ込め、低金利による資産価格高を演出するようになった結果、米国金融市場での歪みの振幅が従来より大きくなっています。

 金融市場というものは、参加者の思惑が大きく変化するため行過ぎることが避けられませんが、時々、大きく変動することで歪みを修正し、長期的にみれば実態を映した鏡として機能しています。そのため、相場の変動を避けるために通貨高・低金利に誘導すると、相場変動による歪みの修正が先送りされ、より大きなものになって跳ね返ってきます。

 1990年代後半以降、世界的な金融市場の混乱について、米国発のものが増えているのはこれらが背景にあると思っています。

 また、米国の大統領選挙の勝ちあがりパターンが確立された結果、2期8年の末期に金融市場の混乱が発生するようになっています。

詳細は以下のとおりです。

1. 1期目4年間は、2期目の当選を確実にするため、政権後半(3~4年目)の経済混乱を極力避ける。そのため、政権初期にはむしろ経済を低迷気味に落とし、徐々に景気が回復した状況で選挙戦に入る。(選挙戦では初期の景気低迷を前政権の責任とし、景気回復を現政権の実績としてアピールする)

2. 2期目に入ると、(米国では3選は禁止されているので)次の大統領選挙のことはあまり考える必要はない一方、政策運営の実績をアピールしたいので、通貨高・(低金利)・資産高に目いっぱい誘導する。そして、強い経済による強い通貨をアピールする。

3. 人為的に引き上げられた相場は歪みが拡大し、また、レームダック化した政権末期には政策対応が遅れるため、2期目の末期に金融市場での混乱が発生しやすくなる




 現オバマ政権は残り1年強となっていますので、米国市場の混乱への注意が怠れないタイミングに入ってきています。

 しかも、これまでは通貨高による低金利政策といっても、ある程度、金利をボトムから引き上げた後に通貨高に誘導していましたが、今回は、ゼロ金利から脱却していないタイミングでドル高誘導を行っていることが特徴です。

 現在のドル高は影響が結構大きく、企業収益は伸び悩み、株式市場が頭打ちになっています。いろいろ理屈をつけていますが、ゼロ金利解除をなかなか決断できないのはこうした状況を背景に、金利引き上げ後の株価維持にFRBが自信を持てないことが本当の理由と思います。




 このように、今回は従来以上に通貨高の影響が高まった状況での中国発の金融市場の激震ということになります。

 もっとも、日米欧といった主要国の金融当局がいずれも金融緩和政策を継続して金融市場に流動性を供給しており、これを強めることが可能な状況にあることから、今回は、政策運営を誤らなければ、ドル高が修正されて歪みを取り除く相場の息抜きになる可能性が高いと思っています。

 但し、日米ともに政権の長期化とともに支持率が低下しているため、政策対応が遅れた場合には、これまでの歪が一気に噴出しますので、その点で注意が必要と思います。