人民元の切り下げの隠れた原因
1週間ほど休暇をとって旅行へ行っていたので遅くなってしまいましたが、先週大騒ぎになった人民元の問題についてコメントしておこうと思います。
1)中国政府の説明は一応筋が通っている。
新聞報道や評論家コメントでは、「中国政府は追い込まれた」、「焦っている」などセンチメンタルな言葉が並びましたが、中国政府の説明は一応、筋が通っています。
・今回の措置の前に人民元相場の基準値と実際のスポットレートで乖離が数%程度ありました。
・直前(8/4)にIMFが(中国政府が目標とする)SDRに人民元を入れるかの判断を、人民元取引の自由度の低さを理由として先送りするとの発表をしています。従って、基準値を前日終値として、変動幅を拡大する措置は、IMFが求める方向とあっています。(実際、IMFは今回の措置を評価する見解を示しています。)
急激に減速する経済において、数%の通貨切り下げが与える影響は極めて小さいものであり、本当に経済刺激策として切り下げを行ったのだとしたら、大失敗ということになります。
これまでの中国政府の傲慢な政策運営から考えて、多少海外から懸念の声が上がったとしても、中途半端な形で政策を終了するとは思えません。
従って、①経済刺激は副次的な理由であり、主たる目的は違うところ(制度変更)にあるか、②中国政府が数%の通貨切り下げで経済を下支えできると考えるほど楽観的であるか、のどちらかであると考えられます。
これらの点から、今後、切り下げが継続する可能性は小さいと思います。更なる人民元の切り下げがなければ、市場参加者の過度な反応も徐々に落ち着きを取り戻すと思います。ただし、中国経済の減速は今後も続き、中国政府や市場参加者は楽観的過ぎるとの見方もこれまでどおりです。
それは、人民元が連動してきた米ドルが高すぎるということです。米国株は今年に入って上昇トレンドが途切れています。米国企業が競争力を維持できないレベルまで通貨が高くなりすぎているということです。
これらの経済のバランスの悪さはいずれ大きな歪となって相場に反映される可能性が高いです。
この点は、今後数年の間に相場のポイントになるタイミングがくることを意識しておく必要があると考えています。