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2020年東京オリンピック、2022年北京オリンピックが与える経済への影響

2022年の冬季オリンピック会場が北京に決定しました。2020年には東京オリンピックもありますので、オリンピックが経済に与える影響について簡単にまとめておきます。

1964年の東京オリンピック、1988年のソウルオリンピック2008年の北京オリンピックなど、オリンピックが経済発展のきっかけになったケースが多数あります。従って、2020年の東京オリンピックで同じ効果を期待している人もいると思います。

しかしながら、経済発展段階でインフラ整備の意味が違いますので、そのような効果は見込めないことを認識しておくべきです。


それを理解するためには、まずはインフラ整備(投資)の経済活動における特殊性を理解しなければなりません。

それは、インフラ整備には以下の二面性があることです。
①投資活動そのものが人・物・カネを使う需要になること
②出来上がった設備が次の生産活動のための設備として生産能力を向上させる(産業競争力を強化する)こと

そして、②の生産能力向上に資することから、会計上、投資が実行された時点では費用と認識されず資産計上され、その後、長期にわたって費用となります。そのため、先行きの経済見通し次第で金額が大きくなりやすいという特徴がうまれます。



さて、経済発展の初期の段階では、高い効果が生まれる投資機会が多いため、オリンピック等のイベントをきっかけにインフラ整備を行った場合、その後の生産能力に大きく寄与します。

例えば、道路が整備されず、内陸の工場から港への輸送効率が極めて悪い状況で幹線道路ができると、輸送効率が大幅に改善され、内陸部への工場誘致が可能となり、経済発展が加速されます。

特に、経済発展の初期の段階では、幹線道路を1本通したぐらいでは経済効果は大きくないが、複数の幹線道路と港湾設備等を一体で大型開発した場合、その効果は何十倍にもなることがあります。これがイベント効果です。

それまで道路1本、鉄道1本作っても効果が小さいとして実現できなかったのが、イベントで外資も含めた多額の資金を一度に投入できるようになった結果、一体で大きな効果が見込めるインフラ整備が進められるようになるケースです。


これに対し、幹線道路等の主要なインフラの整備が一巡している国(先進国)で、イベントが誘致された場合には、インフラ整備といいつつ、大型競技場の建て替えなどが主となります。この場合、需要対策としては大きな効果が見込めますが、その国の産業の競争力強化に繋がる面はほとんどありません。

鉄道・道路の整備についても、それまでアクセス手段がなかったところに新設された場合は大きな効果がありますが、30分かかっていたのが25分になるぐらいの改善であれば、何千億円規模の投資に見合わず、競争力はむしろ低下するケースの方が多くなります。

これが、先進国で大型イベントが行われた場合に、その1年ぐらい前(投資のピーク)に景気の山ができて、イベント後に景気が低迷することが多い理由です。日本でも1998年に行われた長野オリンピックなどはこの典型でした。

2020年の東京オリンピックや2022年の北京オリンピック長野オリンピックと同じパターンになると思います。2020年の東京オリンピックに向けて計画されている投資内容をみれば、それが産業競争力に効果がほとんどないことを理解できると思います。(多少は効果がありそうな羽田空港アクセス鉄道も一体どれだけの人が恩恵を受けるのでしょうか)


そもそも、石原都知事(当時)がオリンピック誘致を表明した際に、発展した東京を世界に見てもらうという趣旨の発言をしていたと思います。つまり、2020年のオリンピックは、膨大資金をかけて日本のすばらしさを世界にアピールするという遊びに過ぎません。これは、一時的な需要喚起にはなりますが、産業の競争力には影響を与えませんから、むしろ少子高齢化の中で重荷になる可能性が高いと思います。

また、2022年の北京オリンピックについても、すでに北京周辺のインフラ整備は一巡しており、今後の投資は生産能力(産業競争力)の向上を伴わない需要喚起策の側面が高くなります。2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博とは全く位置づけが変わってくることをよく理解することが必要です。