中国株式の始まりの終わり
先週も中国の株式市場は大荒れでした。
6月末から中国政府が様々な対策を発表したのに、すぐに下げ止まらなかったことで、逆に効果なしとされて大きく売り込まれる局面もありました。
しかし、よく見ていると、7/4あたりから強力な対策も出され始めており、その効果から週末にかけて急反発しています。
上海総合指数の節目を記録しておくと、
2014/12/31終値: 3234.68
2015/6/5 直近最高値: 5023.10
7/9の朝方の底: 3382.25(昨年末比:+4.6%、高値比:▲32.7%)
7/10(金)の終値: 3878.43(昨年末比:+19.9%、高値比▲22.8%)
となっており、現在の水準は、高値からの下落率でみるか、昨年からの上昇率でみるかで評価はいかようにもできる水準になっています。
新聞等の報道でみると、1年前の水準からみると、まだ含み益を持った投資家が多いとみられることから、今回の実体経済への影響は限られるといった見方が主流のようです。
また、ゴールドマン・サックス、フィデリティなどの外資系金融機関が中国株買いを勧めているとの報道もされ始めております。
こうしたことから、今後は、下値を大きく売り込みにくくなっており、中国株の水準が実態とは乖離した水準にあることを知らしめた「始まり」相場は終了したとみて良いでしょう。
ただし、今回の政府の対策について、最も重要なことはあまり言われていません。
それは、今回の対策が株価下落にパッチをあてただけで、経済の構造問題という根本的な問題への対応がほとんどされていないということです。
株価下落に対して中国政府は様々な対策を打ちました。主なものは以下のとおりです。
6/27 25bpの利下げ+預金準備率の引き下げ
6/30 年金基金の投資拡大
7/1 株式手数料の引き下げ
7/3 株価操縦の操作、売買停止の拡大、空売りの禁止
7/7~ 売買停止がさらに広がる
後半にかけて段々物騒な内容が増えていますが、全て株式市場対策です。株価を初めとする金融市場は本来実体経済を移す鏡でなければならないのに、6/27の利下げ以外は、実体経済に焦点を当てているものはありません。
ここで、今回の株価下落がどうして起きたのかを改めて考えてください。
中国の経済に関する構造問題はこのブログでも何度か取り上げてきました。、
①中国の経済規模が大きくなりすぎて、従来のアメリカを中心とする先進国へ輸出ドライブをかけて成長するモデルに限界が生じている(生産能力に余剰感が高まっており、解消への不安感が少しずつ高まっている)
②ドルの独歩高という世界の為替市場の中で、ドルに連動して人民元の実質価値が上昇しており、中国製品の国際競争力が低下している
さらに、これまで取り上げてない問題として、以下があります。
③投資が一段と加速して過剰設備がさらに増えることを警戒する中国政府が、実質金利を高水準に据え置いている(従って、需要対策としてアクセルを踏まなければならない経済状況下で、強力にブレーキを踏んだ状態にある)
上記の構造問題を考えたとき、新聞報道にある「先週末の株価は1年前の水準からみると、まだ含み益を持った投資家が多いとみられることから、今回の実体経済への影響は限られる。」との指摘はいかにピントが外れているかが分かると思います。
株価下落が始まる前から、実体経済には構造的な問題が発生しており、株価下落がそれを後押ししていると考えた方が論理的です。
そう考えれば、現在の株価の水準をみるのではなく、今後、中国政府が実体経済へどのような手を打ってくるかに注目する必要があります。
しかし、今回の株価下落に対して小幅の金利引下げしか行わなかったことから、中国の政府高官は、(日本の1990年代前半のように、)長期楽観の見通しのもと、産業の構造改革との曖昧な目的のために適正な需給対策を後回しにしているように思えてなりません。
そうだとすれば、中国株式の「始まり」相場は終わりましたが、いずれ(近いうちに)本格的な調整相場がくる可能性が高いことに十分注意すべきと思います。