ndtm50の日記

ブログ5年目に突入!

ギリシア問題の報道がおかしい

引き続きユーロとギリシア問題について考えてます。

週末なので改めて1週間分の報道内容を振り返ってみて思ったことが2点あります。

1点目は、ギリシア問題の報道が非常に偏っていることです。特に現状維持(ギリシアの緊縮策受け入れ、ユーロ残留)にバイアスがかかっています。

報道が偏ることはよくあることで、ほとんどの場合、①欧米の報道が偏っており、それをそのまままとめて日本語で報道している、②日本のマスコミのニュースソースが限られているのどちらかのパターンと思います。今回は、分析記事の偏りが激しいので、欧米の報道が偏っていることが原因と思います。特に、ギリシア国内の情勢について、十分分析できる報道機関がないのでしょう。

2点目は、偏った報道と市場の動きをこじつけて説明しようとしていることです。

為替の大手プレーヤーは偏った報道を基に売買していないため、市場の動きは報道の動きと必ずしも整合的ではありません。しかし、日本のエコノミストは報道内容から市場の動きを説明できないといけないと思い込んでいるため、こじつけた説明になっています。これを鵜呑みにしている限り正しい理解はできず、先行きの予想も間違ってしまうでしょう。


これらの2点を踏まえて、今週のギリシア情勢について考えていきます。

まず、先週末に行われた国民投票の結果ですが、極めて理屈に沿った結果になっています。
先日のブログで現状とユーロ離脱の場合に得する人と損する人を説明しましたが、そのとおり、緊縮策の犠牲になっている若年層や低賃金労働者が国民投票で緊縮策に反対し、ユーロ離脱で大きな被害を受けると思われる年金生活者等の高齢者が賛成しています。

つまり、ギリシアの情勢は、経済理論に沿って素直に考えれば良いのだと思います。

さて、国民投票後の動きですが、やや突き放した感じだったEUに対して、週末、ギリシア側がEU案に近い増税案・年金抑制案を出して、議会にも承認されました。EUとしてのめる案として楽観論が広がっています。

しかし、非常に違和感のある動きです。どうして、国民投票で緊縮策に反対多数だったのに、EU案そっくりな緊縮策が議会で圧倒的多数で賛成されたのでしょうか。新聞の解説では、国民投票で政権の求心力が高まったからとのことですが、全くロジックが破綻しています。



恐らくこういうことだと思います。

ギリシア政権の不満は、緊縮策を5年間も続けてきたが政府債務は減っていない。他方、GDPは大幅に縮小して、むしろ債務負担は高まっている。従って、緊縮策を続けても永久に解決には至らない。

しかし、一時的に緊縮策を受け入れる代わりに、経済安定に必要な銀行への資金支援と債務の大幅減免があれば、緊縮策はずっと続ける必要はなく、一定期間後は、①ユーロ残留、②政府債務負担の解消、③金融・経済の正常化の全てを手に入れることができる。ギリシア政権はこれを狙っている。


他方、EU側(特にドイツ)の考えは以下のとおりと思います。

現在のギリシアの政府債務は、ユーロ諸国をだまして行った放漫財政の結果であるから、債務軽減など応じられない。ギリシアがユーロにとどまることに対してもコストを負担する考えはない。

しかし、返済可能な資金であれば追い貸ししてもかまわないから、緊縮財政が実行されるのであれば、金融の正常化に必要な資金を追い貸ししても構わない。(経済が正常化すれば返済される可能性が高いので)


以上のギリシア側とEU(ドイツ)側の思惑が交差することはありえません。一時的に合意したように見えても長続きはしないと思われます。

従って、思惑の違いがはっきりした場合に、楽観論が広がっている今のユーロ相場は一時的に売られる可能性が高いと思われますが、その場合の解決策はギリシアのユーロ離脱しかなく、ギリシアがユーロを離脱すればユーロはドイツの通貨として再評価(ユーロ高)されることが予想されるます。

従って、ユーロは短期で売り、長期で買いとの考えに変化はありません。私は、あまり短期で売買するのは得意ではないので、引き続き、ユーロが下がったら押し目を拾い続ける予定です。