ユーロ(ギリシヤ問題)、中国株について
○ユーロ(ギリシヤ問題)について
しかし、現状維持をして得をするのは誰かということを考えてみれば、欧州政治家や著名エコノミストが主張する支援プログラム延長・ユーロ残留はギリシヤのためということが全くのうそであることが分かります。
【支援プログラムを実施してきた結果の今の経済状況】
ドイツ: 失業率 6.4%(史上最低)、DAX 前年比+10.2%
絶望的なほど悲惨なギリシヤとドイツで全く対照的です。ドイツは失業率が史上最低で絶好調です。株価のリーマンショック前の最高値と比較しても35%以上も上がっています。
堅実な民族のドイツの経済は成長して、怠惰なギリシヤは過去のつけを払わされているのだから当然というプロパガンダを信じている人は、歴史をよく勉強した方が良いです。そうしたマスコミの宣伝を鵜呑みにする人は投資には向きません。
5月のブログで詳しく書いたので、詳細は繰り返しませんが、現状維持で得する人(国)と損する人をまとめておきます。
【ギリシアの現状維持〔支援プログラム継続〕で得する人と損する人】
・得する人(国):
①欧州大国(特にドイツ)
③投資家(秩序が保たれ、リスクが抑制される)
※ 順番は得する度合いの順です。
・損する人
ギリシヤの年金生活者・公務員以外の人たち、特に失業している若者たち
支援プログラムが停止すれば金融が混乱して大変なことになると主張する人もいますが、そもそも、今の状況が普通じゃありません。1930年代の世界恐慌時のアメリカの失業率が最もひどかったときで25%ですから、その時と同じぐらいの状況に陥っています。
すでに1930年代の世界恐慌時なみに経済が疲弊しているわけですから、銀行の破綻でさらに混乱しても大差ないのです。(北海道拓殖銀行が破綻した1990年代末~2000年代初めにかけての北海道の失業率でも最高7%ぐらい)
さらに、支援プログラムが停止しても、金融システム混乱はグローバルに波及しやすいですから、ユーロ当局やIMFなどの国際機関は銀行支援を継続して銀行破たんを防ぐと思いますから、あまり影響はないと思います。
繰り返しますが、今回、欧州の政治家や民間の著名エコノミストが国民投票での賛成(支援プログラム継続の条件受け入れ)はギリシヤ国民のためと主張しているのは、完全なポジショントークか経済理論を理解していないかのどちらかです。全く信用できない人たちなので、よく覚えておいた方がよいです。(最も、これらの人たちは、(理屈に関係なくプロパガンダで相場を作る)体制派の人たちなので、その意味で主張に耳を傾けておく必要はあります。
さて、1990年代以降の日本もそうですが、大抵のダメな国はプロパガンダに影響されて経済理論に反した行動をとることが多いです。要は自滅するということです。今回のギリシヤもユーロ離脱を選択できないかもしれません。
経済理論からいえば、政治体制(財政政策)を統合せずに通貨・金融政策だけでの統合は、経済破綻を招く可能性が高いことは、ユーロ統合前からまともな経済学者はみな指摘していました。つまり、ユーロ統合は経済効果を狙った行動ではなく、外交政策だということです。(同一通貨を使用して経済的な結びつきが強まれば、戦争しなくなるだろうということ)
なお、今週注目された報道の中に、ギリシヤの財務相の「ユーロを導入する際に輪転機を全て処分しているので、新通貨を発行する能力がない」との発言がありました。これが本当だとすると、ギリシヤ問題解決には、もう少し時間を要するでしょう。(ただし、国内に輪転機がなくても海外に紙幣の印刷を委託することは可能)
もっとも、国民投票で賛成が上回ったとしても「終わり」が始まったとの判断に変わりはありません。政治的な混乱が続く限り、一時的に経済が落ち着きを取り戻しても長くは続きません。最終的な結末は、ギリシヤが国家としての体をなさないぐらいまで衰退するか、ユーロを離脱して輪転機を回すしかないのですから、「終わり」は始まったばかりと考えた方が良いと思います。
「終わり」が始まったということは、長期のユーロ売り相場の終局が見えてきた思っていますので、ユーロは押し目買いスタンスで臨みます。
○中国の株価について
今週の中国の株価は予想どおりの展開となっています。
投資経済の行き詰まり、金余りの株価高騰の反動、政策運営者が長期楽観、改革主義者の台頭などで政策がtoo late, too small なのは1990年代前半の日本とかなり似通った感じがします。
将来のポテンシャルは当時の日本よりはるかに大きいので、今後の展開は経済政策次第ですが、株価への調整圧力は大きいので、よほど大きな政策変更がないと相場のトレンド転換は時間がかかると思います。
アメリカなど長期的に成長を続けている国の特徴は、経済をまずマクロでみること、その上でミクロ政策を推進することです。ミクロ(構造改革、産業調整、成長戦略など)を優先すると必ず全体観を見誤ります。今の中国の政策運営はミクロに偏っているように見えます。
なお、日本への影響ですが、日本が適切な政策運営(需給ギャップ重視)を行っている限り、中国の株価下落はトータルでみて日本の資産価格にポジティブです。(ただし、中国人の買いに支えられている都心部の不動産には影響がでるかもしれません。)