ndtm50の日記

ブログ5年目に突入!

現在の政策の解釈と株価の推移

今回は、これまでの解釈の枠組みを発展させて、望ましい政策と現在の政策をどう解釈すれば良いか、そして現在の政策がどのように相場に影響を与えているかを考えてみたいと思います。
 
先に結論を言うと、現在の政策はかなり理想に近いと思います。ただし、アベノミクスが理想的ということではありません。強力な金融緩和と20144月の消費税上げの組み合わせが理想に近いと思っています。
 
 
過去何回かにわたって書いてきたことを踏まえて日本の失われた20年間の原因を再考すると、以下のとおりとなります。

(1) 1980年代後半には日本経済の規模が大きくなり、アメリカだけに頼れる水準を越えるようになった。

(2)生産力の拡大の結果、経常収支の黒字が拡大し、それが円高を招いて製造業の国際競争力を低下させた。

(3) 中国などが自国通貨を割安水準でドルに連動させ、輸出主導の経済成長を行った結果、多くの産業で国際競争に負けた。

(4)これらの構造変化の中でインフレ抑制の政策を続けた結果、以下のスパイラルが続いた。
   国内経済の停滞で輸入が低迷
   ⇒ 経常収支の黒字
   ⇒ 円高⇒国際競争力が低下
   ⇒ 生産低迷で国内経済が一層停滞
   ⇒ 初めに戻る(国内経済の停滞で輸入が低迷)


こうして考えると、この流れを止めるには、インフレ抑制の政策を変えて景気重視の政策運営(つまり金融緩和)を行う以外になかったことが分かります。強力な金融緩和で経常収支黒字が縮小し、金融緩和の効果と合わさって円安化すれば、国際競争力が回復します。それにより、国内経済は停滞から脱することができるのです。

ここまでは、アベノミクスの第一、第二の矢が成功していることで理解できると思います。
 
 
この景気回復を持続させるためには、潜在成長率を高める必要があります。これがアベノミクスの第三の矢です。でもこの第三の矢は間違っています。
先日のブログに書いたように、潜在成長率を上げるには、労働または資本の投入量を増やすか、生産性を上げる必要があります。しかし、少子高齢化が進む日本では、労働投入を持続的に増やすことは移民を受け入れない限り不可能です。また、継続的に生産性が向上することを期待するもの現実的ではありません。従って、投資を増やす(資本投入を増やす)しかないのです。
(資本投入を行いながら、その中身を吟味することで生産性を向上させることは可能)
 
それでは、持続的に投資を増やすには何が必要でしょうか。
 
投資を増やすためには①投資回収可能な需要があること、②投資活動によるインフレ圧力を抑えることの2点が必要となります。
 
投資回収可能な需要は、アベノミクスの第一、第二の矢でカバーできることです。他方、投資活動によるインフレ圧力はアベノミクスには入っていません。それは、失われた20年間のデフレからの脱却という短期しか視野に入っていないからです。
 
 
しかし、2013年半ば頃までに失業率はかなり下がっており、企業の人の採用が困難化しています。完全雇用状態かどうかは議論が分かれるところですが、日銀短観でも雇用人員判断DIがマイナス(人員不足)になるなど、日本経済全体として労働投入が不足していることは明らかです。
 
そのような状況を考えると、投資以外に使用されている労働力を投資へ回さなければなりません。そうしなければ、投資の増加によって労働が逼迫し、これがインフレリスクとして意識される結果、将来の金融引き締めを警戒したマネーの動きから株・不動産安、円高・投資抑制が起きることになるでしょう。
 
それを防ぐためには、投資を刺激するのと同時に消費を抑制して、消費のために利用されていた消費財の製造、流通(物流、小売店)、サービス業に従事していた人たちを投資のための生産活動にシフトさせなければなりません。5%から8%への消費税上げによってそれが実現できました。
 
現在の日本経済は20143月の消費税上げ後の消費抑制が続いており、結果として、金融緩和による国際競争力回復・資産価格上昇による投資刺激と、消費抑制が組み合わさった最も望ましいポリシーミックスが実行されていることになります。
 
2012年末からの株価の推移をみると、こうした構造が裏付けられます。
 
2012年末からの金融政策方針の変更で20135月まで株価上昇相場が形成されました。これは、金融緩和による景気回復が作り出した株価上昇ファーストステージです。
 
その後、アベノミクス第三の矢である成長戦略が具体性もなく、効果も見られなかったことから相場は横ばいが続きます。
 
20144月に消費税が上がって消費が抑制されると、金融緩和が相当長期化(景気回復期も長期化)することがはっきりしたことから、株価上昇セカンドステージに入ります。その間、201410月の追加緩和などもありましたが、長期株価チャートを月足でみると、きれいに20145月頃からの上昇トレンドが続いていることが分かります。