ndtm50の日記

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欧米流の長期投資は日本では通用しない

投資理論、経済理論を利用する場合に心に留めておかなければならないことは、理論そのものが与えられた一定の経済・産業基盤を基礎に創り出され発展したものということ、さらに、その基盤は不変でないということである。従って、一つの理論がいつまでも適用すると考えるのは危険である。

さらに、経済基盤というものは、年代だけではなく国や地域によっても異なるものである。現代の経済学、投資理論は欧米(特にアメリカ)で発展してきたものであるから、欧米の経済・産業基盤をもとにした理論ということになる。この中には日本でもそのまま通用するものもあるが、通用しないものも多いのが現実である。そのままでは通用しないものの例として、長期投資を挙げておきたい。

投資家の立場で考えたとき、アメリカと日本の経済基盤で意識すべきは、①資源や地理的な条件、②産業構造、③経済政策への考え方の違いである。この中で見落されがちであるが実は重要なものとして経済政策への考え方の違い(③)がある。

アメリカでは、経済政策上もっとも重視されているのが完全雇用の追及である。完全雇用をなるべく長い期間継続させるための前提として物価の安定や財政収支などの問題が考慮されていると考えると政策の方向性を理解しやすい。しかし日本では、縦割りの官僚化が進んでおり、個々の組織が部分最適を目指して政策運営を行っている。良い物価下落論や「バブル」論議を延々と続けてきた日本銀行はその典型的な例であるが、日本銀行に限らない。なお、私は、この違いを生んでいるのは、国民性の違い(民衆の代表機関が政府として発展した国と支配階級が政府を作った国の違い)に根ざしたものと考えている。

余談であるが、アメリカ型の経済政策が採られている国として、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどが挙げられ、日本型の国として中国、欧州大陸諸国(一部)などが挙げられる。これらのグループに分けてマクロ経済指標をみると、経済構造が似通っていることが分かる。

経済・産業基盤の違いを背景に、欧米の投資理論をそのまま日本で実行して成功した例はほとんどないように思う。例えば、最近の投資ブームでバフェット流の長期投資を推奨する論調が目立つようになってきたが、日本で長期投資で成功したという例はあまり聞かない。長期投資は完全雇用を目指してインフレ気味の政策で一貫したアメリカでは有効性が高い方法であるが、日本のマクロ経済環境下でこれが有効だったかといえば疑問である。(永久不変といえる優れた事業を見つけ出して長期保有するというバフェットのやり方が間違っているということではなく、そのような事業を見つけ出すことの難易度が日米では大きな違いがあり、その結果、長期投資の有効性が異なるということである。)

日本で長い間成功を続けているカリスマ投資家は、ほとんどがマクロ経済動向に通じていて、その見方を基に売買を繰り返した投資家(短期売買を繰り返す投機家ではない)ではないだろうか。つまり、日本で投資で成功するためには経済政策の予測を基にマクロ経済の動向を分析し、その時々でリスクに見合ったポートフォリオの組み換えを継続していくことが必要であるように思う。

なお、その際にバフェットの二つの投資原則はアメリカよりも重要視すべき原則と思う。
(バフェットの二つの投資原則)

一、損をしないこと
二、投資原則一(損をしないこと)を忘れないこと