ndtm50の日記

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潜在成長率を引き上げる成長戦略の現実的な答え

日本経済の問題は供給面(低い潜在成長率)であるという見方が増えてきました。
経済統計から計算した需給ギャップがゼロに近づく中、GDPの伸びが停滞していることが原因と思います。

しかし、私が見る限り、ほとんどの新聞・雑誌・ネットの記事が、現象面だけをとらえて非論理的な議論を展開し、誤った結論を出していると思いましたので、ここに話を整理しておきたいと思います。


まず、日本経済の停滞は供給面の問題で需要政策(財政支出、金融緩和)は効かないという議論です。
これは、全くの誤りだと思います。

もし、供給面の問題でGDPが伸びないということであれば、その場合は強烈なインフレが起きているはずです。原油価格等の商品市況の低迷によってインフレが抑えられていたとしても、労働需給の逼迫で少なくとも賃金インフレが起きます。

これは、経済学の一番初めに習う「需要供給曲線」に基づいて考えれば、当然の話です。

足元の現象は真逆を示しており、これは供給面の制約ではなく、需要が不足していることを示しています。

つまり、現在のGDPの停滞は、昨年の消費税率上げに伴って減少した国内消費が、生産減少→賃金低迷を通じて今でも国内需要抑制として作用していること、海外経済(特に世界第二位の経済大国・中国)の経済低迷が外需低迷に作用していることが原因であると思われます。


次に、日本は供給面に問題があり潜在成長率が0%近傍なので、これ以上の需要政策は不要あるいは弊害が多く、供給面の政策(所謂成長政策)を行わなければならないというものです。

しかし、そういう人に限って、国の成長政策を非難するだけで具体的な政策を挙げることはできません。

それは当然のことだと思います。国が計画的に供給力を上げることは、旧共産圏の計画経済政策などを通じて効果が否定されています。(日本の高度経済成長も、ほとんどの実証研究において経済産業省などの産業政策には効果がなかったと結論づけられているようです)

アメリカでも一時期サプライサイド経済学がもてはやされ、それを採用した経済政策が打ち出されたこともありましたが、実際に供給面の拡大に大きく寄与したインターネット等の通信は、主に軍事機関等で研究され確立した技術がそのタイミングで実用化されただけだと思います。

これら過去の歴史をみる限り、政府主導で成長戦略が作成され、それに基づいて供給面が拡大(潜在成長率が上昇)した例は、後進国外資を導入してインフラ整備を行い、それによって産業の育成が進んだこと以外にはないと思います。

他方、経済規模の小さな新興国を除いて、潜在成長率を高水準に維持できている国は、①移民を受け入れるなどして人口増加が続いている(労働投入の増加)、②好景気が続いているため不足する生産能力を補うための高水準の設備投資が行われている、の2点に尽きると思います。

(移民の受け入れを行わないのであれば、)需給ギャップがゼロに近づいているから需要政策は必要ないのではなく、供給面を増やすための設備投資を促進するため、政策面では需要政策を重視し、好景気を継続して設備投資を呼びこむことが必要になります。

つまり、供給を伸ばすためには、需要を刺激するのが対策というつまらない結論になります。

すばらしい成長戦略を実行して経済を再生できればかっこよいのですが、そこには解はなく、景気がよい状況をキープすればよいというつまらないことが答えということは、世の中、よくある話しだとも思います。

なお、余談ですが、設備投資の結果に対するリスクとリターンを資本家にゆだねる現在の経済システムにおいて、景気の低迷を脱するために政府が企業に設備投資を要請するというのは全くのナンセンスだと思います。政府の役割は、企業が設備投資を行いたくなるような良好な経済状況を作り出すことです。